著者
徳永 純
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.47-54, 2017

<p> 患者が十分に理由を語らないまま沈黙し、生死に関わるような治療や処置に同意しない、という問題に直面することがある。周囲は自己決定を尊重しつつも当惑し、意図がくみ取れずどのように対応すべきか苦慮する。本稿ではこのような神経難病の自験例について、メルヴィルの『書記バートルビー』を手掛かりに考察する。仕事を拒否して何もしなくなった主人公バートルビーに対し、雇用主である弁護士は心情を斟酌し、寄り添おうと努力するが、バートルビーの沈黙の前になすすべがなく苦悩する。こうした作品のモチーフは自験例と共通するうえ、バートルビーの謎を巡り多様な解釈が提示されている。作品とその解釈を参照することによって、自験例の論点は、自己決定の尊重の是非から、潜在的な患者の抵抗やパターナリズムへと拡張される。これらの検討を通じこれまであまり試みられなかった文学作品と医療倫理ケースの比較検討の意義を明らかにする。</p>

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CiNii 論文 -  患者の沈黙を 『書記バートルビー』 から読み解く:-文学を手掛かりにしたケーススタディの試み- https://t.co/WYcU9qnxcd #CiNii こういうのもあるのか

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