- 著者
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大富 あき子
- 出版者
- 日本調理科学会
- 雑誌
- 日本調理科学会大会研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.30, 2018
【目的】九州南部に位置する鹿児島県は広大な海面を有し、都道府県別漁業生産量や生産額では上位に位置している。しかしながら、魚介類の消費量では最下位に近い位置で推移している。とはいえ、地域によっては魚介類を使った伝統料理が伝承されている。その一つがサメ類の身を茹でた志布志市のせんさらである。茹でたサメを食べる文化は他の地域にも見られるが、材料となるサメの種類や製法は必ずしも同じではない。そこで、志布志市のせんさらに用いられるサメの種類と伝統的な製法について調べた。<br><br>【方法】鹿児島県内の志布志漁協(2018年1月)、東串良漁協(2018年4月)、高山漁協(2018年4月)において聞き取り調査および水揚げ物調査を行った。また、2018年4月に志布志市内の鮮魚店Aにおいてせんさらに関する聞き取りを行うとともに、材料から製品が出来上がるまでの全過程を実演していただいた。<br><br>【結果】せんさらに使われるサメは皮のやわらかい全長1m未満の小型のもので、ドチザメ科のホシザメ、シロザメ、メジロザメ科のホウライザメ、ハナザメの若魚など、沿岸性の種が好まれることがわかった。盛期は春から夏で、特に毎年4月29日に開催されるお釈迦まつりには欠かせない伝統料理である。製法は、まず鍋に入る程度の大きさに切ったサメを湯通しして盾鱗を取り除き、皮付きのまま厚さ2㎝程度に切って流水にさらす。次に塩をまぶして一晩寝かせる過程が入るのが志布志市の伝統的製法である。塩を洗い流し、茹でた後に長時間流水にさらして塩分を抜き、皿に盛って酢みそで食べる。酢みそには、山椒の若葉をみじん切りにして加える。塩でしめることで、他の地域のものよりも歯ごたえのある食感となっている。