著者
大富 あき子 田島 真理子
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.20-30, 2009-01-15
参考文献数
31
被引用文献数
4 1

めんつゆの味に関して,SD法を用いて食味特性(プロフィール)と品質(分析値)との関連を調べ,めんつゆの材料が味にどのように影響を与えているのかを明らかにすることを目的に,材料の種類や割合を変えた16種のつゆを調製し,SD法による食味特性評定および一般成分分析を行った.重回帰分析,因子分析を行い,次の結果を得た.<BR>(1) 砂糖を少量増したつゆ,鰹節をIMPに等量置換したつゆはおいしさを保っており,鰹節や昆布を増量したつゆ,MSGを添加したつゆはだしの味やうま味は増強されたものの,多すぎると必ずしもおいしいとの評価にはつながらなかった.昆布をMSGに置換したつゆは,コントロールと有意な差がなく昆布の代用としておいしさを保てることがわかった.<BR>(2) 一般成分分析値と食味特性値との重回帰分析結果より,グルタミン酸濃度はつゆの特性にかなり大きな影響を与えていたが,食味特性としての塩味には特徴があったにもかかわらず,食塩濃度分析値はつゆの特性に対して影響は少なかった.また,全糖濃度も甘味,かど,ひきしまった味以外にはあまり影響を与えてはいなかった.<BR>(3) 因子分析の結果,「複雑な濃厚さ」「つゆのシャープさ」「だしとうま味」の3つの特性が認められた.鰹節を増量したつゆ,濃口醤油に置換したそれぞれのつゆは特にこれら3つの特性が強く認められたので,この両者を適量使用することにより,複雑な濃厚さ,シャープさ,だしとうま味をつゆに付与できることがわかった.<BR>以上より,つゆの材料としてMSGを付与し,鰹の天然だし,濃口醤油を適量用いることは,特に2倍,3倍に希釈して用いる市販の濃縮めんつゆの複雑な味に大きく寄与することがわかった.
著者
井野 睦美 大富 あき子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2021年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.99, 2021 (Released:2021-09-07)

【目的】近年オリーブオイルに様々な食材を漬け込んだ商品が見られる。食材を漬けることで変化するオイルの風味を活かして、塩分量が多いと言われる和食へ利用した際の美味しさの増強や減塩効果について検討した。【方法】日本デルモンテ株式会社より提供のエキストラバージンオリーブオイルを使用し、11種の食材を1週間浸漬した。そのうち特徴のある食材3種(小エビ・かつお節・わさび)に厳選し、①常温で豆腐にかけて②加温してフランスパンに含ませて、標準オイルと比較して特徴を評価した。またこれらを和食に使用し、オイル未使用のコントロール料理と比較検討を行った。小エビオイルは味噌汁に加え、同じ塩分濃度の味噌汁と比較した。かつお節オイルは、醤油とオイルの混合液と、醤油のみをほうれん草のお浸しで比較した。わさびオイルは、醤油とオイル1:1混合液と、醤油のみを鯛の刺身で比較した。【結果・考察】小エビオイルは加温により辛みと生臭い香りが抑えられた。かつお節オイルは常温・加温両方で評価が高く、かつお節のうま味や風味が強く感じられた。わさびオイルは嗜好の個人差が大きいが、加温するとわさびの風味が減少することがわかった。小エビオイル入り味噌汁は、コントロールに比べ有意にマイルドであった。かつお節オイルのほうれん草のお浸しはコントロールに比べ有意にコクが強かった。わさびオイルを用いた刺身はコントロールに比べコク、うま味、マイルドさ、美味しさが有意に高かった。この結果から、食材を漬けたオリーブオイルを各種和食料理に使用することで美味しさが増していた。またほうれん草のお浸しと刺身は少ない醤油量で満足が高く、減塩効果も期待できると示唆された。
著者
大富 あき子 大富 潤
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.180, 2018

目的<br>日本列島の最南端に位置する鹿児島県は温暖な気候に恵まれ、一年を通じて様々な作物が収穫でき、多彩な郷土料理が伝承されている。指宿市山川地区に古くから伝わる郷土料理で鹿児島県ふるさと認証食品の一つでもある山川漬は、かめ壺で発酵させた大根の漬物で、たくあんのルーツであるが、近年生産者の数が激減している。そこで本研究は、山川漬の伝承と生産の現状を明らかにすることを目的とした。<br>方法<br>認証基準に合致した製法で山川漬を生産しているA漬物店(指宿市)を2018年1月に訪問した。現地では生産の現場を視察するとともに、代表者へのインタビューを行った。<br>結果<br>山川漬は古くは「唐漬(からづけ)」と呼ばれ、1592年の豊臣秀吉の朝鮮出兵に向けて兵をあげた島津義久の軍船に、山川港周辺の農家が生産した唐漬が兵糧として積み込まれている。「山川漬」と呼ばれるようになったのは江戸時代で、原料となる大根は練馬大根あるいは理想大根などの白首大根である。泥付きのまま2段に組んだ竿で約1カ月間干したものを、塩をふりながら木製の細長い臼において杵でたたく。かめ壺の底にすのこを敷き、大根を塩と交互に隙間なくつめ、密封して半年から1年間漬ける。できる限り水分を除去し塩だけで発酵させる山川漬は、温暖な南九州における理にかなった保存食である。以前は各家庭で作られていたが、今では4つの店舗でしか製造されておらず、原料からの製造は2店舗のみである。
著者
大富 あき子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】九州南部に位置する鹿児島県は広大な海面を有し、都道府県別漁業生産量や生産額では上位に位置している。しかしながら、魚介類の消費量では最下位に近い位置で推移している。とはいえ、地域によっては魚介類を使った伝統料理が伝承されている。その一つがサメ類の身を茹でた志布志市のせんさらである。茹でたサメを食べる文化は他の地域にも見られるが、材料となるサメの種類や製法は必ずしも同じではない。そこで、志布志市のせんさらに用いられるサメの種類と伝統的な製法について調べた。<br><br>【方法】鹿児島県内の志布志漁協(2018年1月)、東串良漁協(2018年4月)、高山漁協(2018年4月)において聞き取り調査および水揚げ物調査を行った。また、2018年4月に志布志市内の鮮魚店Aにおいてせんさらに関する聞き取りを行うとともに、材料から製品が出来上がるまでの全過程を実演していただいた。<br><br>【結果】せんさらに使われるサメは皮のやわらかい全長1m未満の小型のもので、ドチザメ科のホシザメ、シロザメ、メジロザメ科のホウライザメ、ハナザメの若魚など、沿岸性の種が好まれることがわかった。盛期は春から夏で、特に毎年4月29日に開催されるお釈迦まつりには欠かせない伝統料理である。製法は、まず鍋に入る程度の大きさに切ったサメを湯通しして盾鱗を取り除き、皮付きのまま厚さ2㎝程度に切って流水にさらす。次に塩をまぶして一晩寝かせる過程が入るのが志布志市の伝統的製法である。塩を洗い流し、茹でた後に長時間流水にさらして塩分を抜き、皿に盛って酢みそで食べる。酢みそには、山椒の若葉をみじん切りにして加える。塩でしめることで、他の地域のものよりも歯ごたえのある食感となっている。
著者
大富 あき子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成30年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.118, 2018 (Released:2018-08-30)

【目的】九州南部に位置する鹿児島県は広大な海面を有し、都道府県別漁業生産量や生産額では上位に位置している。しかしながら、魚介類の消費量では最下位に近い位置で推移している。とはいえ、地域によっては魚介類を使った伝統料理が伝承されている。その一つがサメ類の身を茹でた志布志市のせんさらである。茹でたサメを食べる文化は他の地域にも見られるが、材料となるサメの種類や製法は必ずしも同じではない。そこで、志布志市のせんさらに用いられるサメの種類と伝統的な製法について調べた。【方法】鹿児島県内の志布志漁協(2018年1月)、東串良漁協(2018年4月)、高山漁協(2018年4月)において聞き取り調査および水揚げ物調査を行った。また、2018年4月に志布志市内の鮮魚店Aにおいてせんさらに関する聞き取りを行うとともに、材料から製品が出来上がるまでの全過程を実演していただいた。【結果】せんさらに使われるサメは皮のやわらかい全長1m未満の小型のもので、ドチザメ科のホシザメ、シロザメ、メジロザメ科のホウライザメ、ハナザメの若魚など、沿岸性の種が好まれることがわかった。盛期は春から夏で、特に毎年4月29日に開催されるお釈迦まつりには欠かせない伝統料理である。製法は、まず鍋に入る程度の大きさに切ったサメを湯通しして盾鱗を取り除き、皮付きのまま厚さ2㎝程度に切って流水にさらす。次に塩をまぶして一晩寝かせる過程が入るのが志布志市の伝統的製法である。塩を洗い流し、茹でた後に長時間流水にさらして塩分を抜き、皿に盛って酢みそで食べる。酢みそには、山椒の若葉をみじん切りにして加える。塩でしめることで、他の地域のものよりも歯ごたえのある食感となっている。
著者
大富 あき子 北倉 芳久 染谷 清一 橋本 彦尭
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.953-959, 1992-11-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

かえしのねかしに有用な微生物が関与しない場合の,“ねかし”操作が品質に与える影響を調べ,以下の結果を得た.かえしをねかした場合,かえしが大気に接触する開放系には,品質の改善及び嗜好性の改善が認められ,密封したかえしには品質の改善が認められなかった.微生物の菌数は,どちらのかえしにも同じように酵母の若干の増殖が見られ,その他の菌には経時変化は見られなかった.窒素雰囲気下でもかえしの熟成効果は認められたので,空気による酸化褐変はかえしの熟成による品質改善に影響してはいなかった.開放系でのねかしに伴いアルコール分の蒸発,特に比較的高蒸気圧な成分が減少していることが認められた.しかし高蒸気圧の1成分であるエタノールの減少は官能評価に影響は与えていなかった.以上より,かえしのねかしに有用な微生物の関与しない場合の熟成と思われる品質の改善は,エタノールや水と同時に蒸発するような高蒸気圧成分の揮発による現象ではないかと推定できた.
著者
大富 あき子
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.12, pp.926-938, 2009-12-15
被引用文献数
1

醤油の消費は家庭用から業務・加工用へシフトしており,その中でもめんつゆは増加している。著者は心理学の分野で多用されるセマンティック・ディファレンシャル(SD)法は食品の食味特性(プロファイル)を求めるのに有効な方法であることを明らかにし,今回はめんつゆの味の官能評価に用いて,めんつゆの食味特性と品質(分析値)との関連を調べている。そして,つゆの材料としてグルタミン酸ナトリウムを付与し,鰹の天然だし,濃口醤油を適量用いることは,特に2倍,3倍に希釈して用いる市販の濃縮めんつゆの複雑な味に大きく寄与することを明確にしている。おいしいめんつゆを製造するために,メーカーに一読をお勧めしたい。