著者
れいのるず秋葉 かつえ
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.87-104, 2018

<p>この研究の目的は、中世から近世、近代はじめの800年間に書かれた書簡をデータにして、日本語自称詞の歴史的変化のアウトラインを描きだすことである。まず、中世は大陸言語との接触に刺激されて「私」「某」などの和語自称詞がいくつか創出されはしたが、漢語自称詞そのものはまだ使われることがなかった。中世は「和語自称詞の時代」であった。江戸期には徳川幕府の漢学奨励政策によって有文字人口が急増し、「拙者」を代表的な例とする漢語自称詞が学者、武士その他の識者たちの間に広く普及した。しかし、江戸中期には新たな漢語自称詞「僕」が出現し、和語自称詞と「拙者ことば」を中心にした自称詞パラダイム(権力原理タイプ)は、「僕」を主体とするパラダイム(連帯原理タイプ)にシフトしていった。「僕」は封建社会のタテマエが崩れた大状況に打ち込まれた楔の役割を担いつつ、幕末乱世を生き延びて近代を支え、現代日本語の主要な男性自称詞となっている。</p>

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「私(わたし・わたくし)」「あたし」「俺(おれ)」「僕(ぼく)」「自分(じぶん)」など、自分を呼ぶ言葉「自称詞」「一人称」について知りたい。

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れいのるず秋葉かつえ「自称詞の歴史社会言語学的研究―「拙者」から「僕」へ―」(『ことば』39)は、「僕」が日本語に定着していく過程を分析。幕末の吉田松陰は「僕」を最初に使った人ではないが、「「僕」を多用し、「僕」を広げた人」だと指摘。渡辺華山の事例などを紹介。 https://t.co/Vqbx2DlZ6a

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