著者
楠見 友輔
出版者
日本教育方法学会
雑誌
教育方法学研究 (ISSN:03859746)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.49-59, 2018

<p>本稿では,社会文化的アプローチの視点から学習者の主体性に基づく教授と授業のあり方についての議論を行った。社会文化的アプローチにおける学習者の「媒介された主体性」という概念は,個人の有能さではなく,文脈や環境に埋め込まれた主体の意思や行為する力を示すものである。このような観点からは学習者を同質的な主体性を有する集団と捉えたり,教師の教授と学習者の学習を対立的に捉えたりする見方は否定され,授業が教師と個々の学習者の主体性による複雑な相互活動の過程とみなされる。学習者と教師の主体性の関係の二者択一を解消するために重要となるのが教師の教授におけるコンティンジェンシーである。コンティンジェンシーへの注目は学習者の主体性を教師の教授の起点とし,学習者の主体性の発現を促し,授業に学習者の生活世界の文脈を導入することを可能にすることが示された。個々の学習者と教師が授業において主体として相互活動を行うためには授業を対話的構造に転換することが必要であると言われている。筆者は主体性に基づく教授と授業を行うためには,授業の具体的文脈における学習者の主体性に基づき,個々の学習者の主体性が実現されるような多様な教授や授業の方法や形式について議論することが必要であることを指摘した。</p>

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『教育方法学研究』の第46巻(2021)年のニュー・マテリアリズムに関する論文(https://t.co/YOwHfd3BYo)において、自分が第43巻(2018)で示した社会文化的アプローチ(https://t.co/XhuKDMyD8E)の理論的限界を指摘し、それを克服するための方策を示せたことが良かったです。

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