著者
木村 秀雄
出版者
学校法人 自由学園最高学部
雑誌
生活大学研究
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.78-96, 2018

自由学園における「親友を作ってはいけない」という指導はなぜ存在したのか、青年海外協力隊員の「派遣先の国が好きになれなかったらどうしよう」という不安にはどう答えるべきか、人類学の「仕事を始める前にまず調査地の人と仲良くなるべきだ」という調査論は正しいのか、この3 つの疑問を出発点に、他者に共感することの功罪について論ずる。「速い思考(システム1)」と「遅い思考(システム2)」、「手続的行為」と「宣言的行為」、「価値観に彩られた感情的行為」と「価値自由な慣習的行為」という人間の行為を2つに類型化する理論的枠組みをさまざまな観点から論じ、この枠組みを基礎にして「共感」について広い観点から論ずる。その結果、3つの疑問に対して、共感が人間の生活において大きな力を持っていることを認めつつも、それを強調しすぎることは視野をせばめ、教育・国際協力・人類学調査の目的に合致しないことがあると回答する。さらに最終的に、共感を利用しながらも、社会に対する広い視野を保ち、社会の公共性に対する考慮を失ってはならないと結論づける。

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