著者
斉藤 知洋
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.44-56, 2018

<p>本稿では,「就業構造基本調査」の匿名データ(1992・2007年)を用いて,1990年代から2000年代にかけてのひとり親世帯内部の所得格差とその変容について時点間比較を行った.</p><p>分析の結果,以下の知見が得られた.第1に,有子世帯の所得格差は,過去15年間で拡大傾向にあり,とくに独立母子/父子世帯内部で所得格差が大きい.第2に,高学歴化によりひとり親の教育水準が急速に向上したものの,ひとり親世帯の低学歴層への偏りは安定的に維持されている.第3に,要因分解法の推定結果より,世帯所得の学歴間格差が独立ひとり親世帯の所得格差の拡大に寄与しているが,他の成人親族との同居はひとり親世帯の階層差を緩衝させる役割を持っていた.</p><p>以上より,ひとり親世帯内部の所得格差は階層差を伴って緩やかに拡大しており,家族・世帯の「自助努力」を強調する福祉政策は,低学歴層のひとり親世帯の経済状況を悪化させる可能性が示唆された.</p>

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