著者
芳賀 和樹
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p> 東北地方日本海側におけるスギの分布変化を明らかにするため、秋田県を対象に、17~19世紀の森林利用にかかわる文献史料を分析した。17世紀前半には建築用材生産のためスギ利用が活性化し、17世紀後半にはスギの減少が問題となった。また阿仁川流域では、17世紀後半から阿仁鉱山の開発が積極的に進められ、製錬用の木炭・薪需要が急増した。これにより阿仁鉱山周辺では、針葉樹よりも落葉広葉樹を優先した森林管理がみられるようになった。具体的には、スギの伐採跡地に落葉広葉樹を育成したほか、落葉広葉樹の育成に支障が出る箇所にはスギの植栽は禁止された。19世紀後半に作成された官林(のちの国有林)の台帳によると、秋田県のなかでも阿仁鉱山周辺ではブナ・ナラが多く分布し、スギの分布は少ない。たとえば荒瀬村所在の官林では、ブナ約460万本、ナラ約270万本、イタヤカエデ約120万本、ホオノキ約100万本、サワグルミ約140万本、その他60万本に対し、スギは約20万本となっている。こうした分布は、17世紀以降におけるスギの積極的な伐採に加え、鉱山開発と連動した木炭・薪生産の興隆と、それに対応した落葉広葉樹優先の森林管理の結果であったと考えられる。</p>

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17~19世紀の森林利用とスギの分布への影響 https://t.co/4OaFyWLcKd ※抄録

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