- 著者
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阿部 康久
李 商益
- 出版者
- 日本都市地理学会
- 雑誌
- 都市地理学 (ISSN:18809499)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, pp.71-79, 2016
<p>中国・延辺朝鮮族自治州の延吉市を対象として,情報サービス産業の進出と停滞について従業員の雇用条件等に注目して検討した.調査結果として,延吉市内には,主に国内企業や韓国企業を中心に情報サービス産業のある程度の立地がみられる.同市への企業進出は2006 年頃から顕著になり始めたが,当初は,韓国語を理解できる朝鮮族住民が多く,しかも賃金水準が低かったことが進出の大きな要因となっていた.しかしながら, 2008 年以降は,リーマンショック等の金融危機が起こったことに加えて,賃金水準の上昇が顕著になったことで一部の進出企業では経営状況が悪化するものや撤退するものもみられた.一方,賃金水準は以前に比べると上昇しているものの,国内の他地域や海外を勤務地とする求人に比べると依然として低い水準にあることが分かった.この要因として,求人の職種や勤務内容をみると,高賃金が期待できるものが少ないことが指摘できる.</p>