著者
伊藤 創
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.154, pp.153-175, 2018

<p>一方から他方へ働きかけがなされる事態を描写する際,英語母語話者は働きかけ手(agent)を主語に立てる傾向が日本語母語話者のそれより強い。本研究では,この描き方の型の違いが両者の事態の捉え方の型の違いに根ざしているのかどうかを検証するため,働きかけに関わる事態について,その「次」に起こった事態を想像してもらい,いずれの参与者を主語として描くかを比較した。次の事態を描く際には,当該の事態でより焦点をあてて捉えている参与者について描くのが自然と考えられるからである。結果は,ほぼ全ての画像で英語母語話者のほうが日本語母語話者よりagentを主語に立てる割合が高かった。このことから,1)日英語母語話者の事態の描き方の型の違いは,両者の事態の捉え方の型の違いに根ざしており,2)その違いは,英語母語話者は行為連鎖/力動関係において力の源である参与者に,日本語母語話者は共感度の高い参与者により際立ちを感じやすいという違いであることが強く示唆される。</p>

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