著者
河野 有理
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.1_53-1_76, 2016

<p>能動的な政治主体の構成員をいったいどのような名前で呼べば良いのか。「良民」 か 「士族」 か, はたまた 「士民」 か (「市民」 なる語はかなり新出来である)。東アジア世界の近代に共通の難問のひとつの解として, 1920年代以降, 急速に浮上したのが 「公民」 という概念であった。本稿では, 蠟山政道の 『公民政治論』 (1931年) に焦点をあて, この 「公民」 概念が同時代の 「政治と教育」 問題を考える上での鍵概念であることを示そうとした。<br>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;蠟山は 「公民」 について, それを 「社会の発見」 に引き付けて理解しようとする同時代の他の論者 (たとえば大島正徳) とは異なり, 終始, 政治的存在として理解しようと試みた。蠟山にとって, したがって, 公民教育とは政治教育であり, そこでは多数決の意義や政党の持つ積極的な道徳的意味が教えられるべきだった。<br>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;政治を教育や倫理と不可分とみなすこうした蠟山の政治観は, 政治をあくまで権力の体系, 目的達成のための手段とみなす丸山の政治観とは異なっていた。</p>

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[政治学][思想史] 河野有理(2016)「「公民政治」の残影:蠟山政道と政治的教養のゆくえ」(特集 政治と教育), 年報政治学 67(1), 1_53-1_76, 2016.

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