著者
越後谷 和貴 岡田 恭司 皆方 伸 長谷川 弘一 若狭 正彦 木元 稔 齊藤 明 大倉 和貴 須田 智寛 南波 晃
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.E-183_2-E-183_2, 2019

<p>【目的】</p><p> 脳卒中後片麻痺患者のうち、リハビリ開始時に杖なしで自立歩行が可能な患者では、歩行パターンに何らかの異常を有しても、歩行自立の妨げにはならない程度の異常と言える。よってこれらの異常を定量的に明らかにできれば、片麻痺患者に歩行自立を許可する基準となると考えられる。近年、簡便かつ定量的に歩行パターンを評価できるツールとして足圧分布が種々の疾患で広く調べられており、片麻痺患者でも応用が期待できる。本研究の目的は、回復期リハビリ開始前から自立歩行が可能であった片麻痺患者の歩行パターンを、足圧分布を用いて解析し、自立歩行を許可しうる異常を明らかにすることである。</p><p>【方法】</p><p> 回復期リハビリテーションを受けた脳卒中後患者31名のうち、入院時に杖なしで歩行が自立していた右片麻痺患者8名(自立歩行群;男6名、女2名、平均年齢62 ±7歳、梗塞4名、出血4名)と、75歳未満の地域在住者で下肢に整形疾患のない14名(健常群;男7名、女7名、64 ± 6歳)を対象に足圧分布測定システム(F-scan Ⅱ、ニッタ社製)を用いて、10 m 快適歩行における足圧分布、および歩行速度を計測した。足圧分布のデータより、踵、足底中央、中足骨、母趾、第2-5趾の5領域の荷重圧比、足圧中心軌跡の足部長軸方向の移動距離比である%Long をそれぞれ3回計測し、平均値を算出した。統計学的検討では健常群と比較した入院時の特徴を明らかにするため、荷重圧比、%Long、歩行速度の群間比較に対応のないt 検定を用いた。また荷重圧比、%Long と歩行速度との相関をSpearman の順位相関係数で検討した。解析ソフトはSPSS 21 を用い、有意水準は5%とした。</p><p>【結果】</p><p> 健常群に比べ、自立歩行群では右足(麻痺側)の足底中央への荷重圧比が高値(健常群2.9 ± 1.7% vs.自立歩行群 8.3 ± 6.4%)を示し、第2-5趾への荷重圧比が低値(8.8 ± 4.0% vs. 5.4 ± 1.5%)で、%Longは低値(78.7 ± 7.4% vs. 70.1 ± 8.3%)を示した(それぞれp = 0.008,p = 0.014,p = 0.030)。左足(非麻痺側)では足底中央への荷重圧比が高値(2.8 ± 2.1% vs. 8.2 ± 8.1%)を示し、%Longは低値(77.8 ± 6.8% vs. 68.2 ± 6.1%)を示した(それぞれp = 0.034,p = 0.004)。自立歩行群で歩行速度は低値(1.3 ± 0.2 m/sec vs. 1.0 ± 0.2 m/sec)を示した(p = 0.006)。</p><p> 歩行速度は右足の踵(rs = .49,p = 0.022)、%Long(rs = .45,p = 0.035)とそれぞれ有意な正の相関を示し、足底中央(rs = ‐.56,p = 0.007)とは有意な負の相関を示した。また左足の踵(rs = .56,p = 0.007)、%Long(rs = .49,p = 0.022)とそれぞれ有意な正の相関を示し、足底中央(rs = ‐.60,p = 0.003)とは有意な負の相関を示した。</p><p>【考察】</p><p> 健常群に比べ自立歩行群では麻痺側、非麻痺側とも足底中央への荷重圧比が高く、足部長軸方向への移動距離比である%Longが低値で、かつ%Longと歩行速度との相関性が注目された。脳卒中後患者では両側の%Longが健常者の85%程度あれば、自立歩行を許可することが可能と考えられた。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p> 書面で説明を行い、同意書を得た上で開始した。測定中は理学療法士が傍に着き、事故のないように配慮した(秋田県立リハビリテーション・精神医療センター倫理審査委員会28-5)。</p>

言及状況

外部データベース (DOI)

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CiNii 論文 -  回復期リハビリ開始前より自立歩行が可能であった片麻痺患者の足圧分布の特徴:-地域在住者との比較- https://t.co/Ug7uVNpXZt

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