- 著者
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岸田 和也
石垣 智也
尾川 達也
松本 大輔
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.46, pp.G-67_2-G-67_2, 2019
<p>【はじめに,目的】</p><p> 訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)を終了した際,その後の経過を知る機会は少なく,良好な生活を継続できているかを把握することは難しい.そこで本事業所では,サービス終了後の利用者の不安軽減と,良好な生活を継続するための要因を把握するために,訪問リハ終了3ヶ月後の追跡調査を取り組みとして実施した.今回,その調査結果とともに,生活状況の変化が異なった2事例の比較からその要因についても検討した.</p><p>【方法】</p><p> 対象は目標達成にて訪問リハを終了した13名(男性4名,女性9名,平均年齢75.7±11.4歳)とした.訪問リハ終了3ヶ月後に居宅に訪問して質問紙への回答を依頼し,1週間後に質問紙の回収と生活状況の変化に関する詳細な聴取を行った.質問紙の内容は,終了時からの生活状況の変化,自主運動などの健康行動の実施とその頻度,活動量の変化などの項目から構成した.事例1は90代の女性で,独居であり屋内つたい歩き自立.家事などの自立,自宅前の歩行練習が定着し終了となった.事例2は右片麻痺を呈する60代の男性で,屋内四点杖歩行自立.外出はほぼなく低活動の状態であったが,最低限のADL動作の安定と屋内での自主運動の定着,近所の見守り歩行が可能であることを確認し終了となった.</p><p>【結果】</p><p> 生活状況の変化は「改善」8名,「変化なし」5名,「悪化」0名,健康行動の実施は「毎日」4名,「時々」7名,「非実施」2名,活動量の変化は「増加」6名,「変化なし」5名,「減少」2名であった.事例1は,生活状況は「改善」(家事などの継続),健康行動は「毎日」(自宅前の歩行),活動量は「増加」(家事や庭作業など)と回答し,活動量は高い状態で経過しており,生活は良好な状態で継続していた.事例2は,生活状況は「改善」(ADL動作等屋内の生活は転倒なく安定),健康行動は「時々」(週4回,屋内の立位運動),活動量は「減少」(外出機会や近所の歩行はほぼなし)と回答し,生活状況は保たれているものの低活動の状態が継続しており,屋外歩行機会は減少していた.その後徐々に動作耐久性の低下が生じ,終了14ヶ月後に通所リハビリテーションの利用を開始した.</p><p>【結論】</p><p> 質問紙では全対象で生活状況は維持・改善している結果であったが,活動量は減少している事例もあった.高い活動量を維持していれば,生活状況の維持・改善が見込めるが,低活動状態の継続もしくは活動量の減少により,生活状況の悪化を招く恐れがある.良好な生活を継続するには,高い活動量の維持や増加が重要であり,健康行動や家庭での役割などを終了後も定期的に継続できるよう,自己管理を行えるように教育的な介入が重要であると考えられる.しかしながら,介入によっても自己管理による定期的な活動の継続が困難な場合には,通所サービスや地域コミュニティなど地域資源への円滑な移行を図ることが重要であると示唆された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言を遵守し,対象者またはその主介護者に対して十分な説明を行い,同意を得た後に実施した.また,プライバシーおよび個人情報の保護には十分に配慮し,データの統合においては匿名化処理を行った後に実施した.</p>