著者
黒木 唯 柿木 理沙 桒畑 慶輔 大山 史朗
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.H2-92_2-H2-92_2, 2019

<p>【はじめに、目的】</p><p>女性の多くは,月経前3日~10日間(黄体期),月経発来とともに減退ないし消失する月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)に悩まされている.しかしこのPMS症状は主観的な捉え方が多く,定量化された報告は少ない.Liuらにより「ACLにエストロゲン・プロゲステロンのレセプターが存在し,女性ホルモンがACLのコラーゲン構造や代謝に影響を与えている」と報告されている為,PMSを含む生理周期における身体機能を定量化できれば,それぞれの生理周期に対するアプローチ確立に効を奏すると考え,調査に至った.</p><p>【方法】</p><p>対象は,本研究の主旨に同意の得られた健常成人女性7名(出産経験なし,年齢23.8±0.8歳,身長157.7±6.3cm,体重53.1±8.2kg)とした.方法は,月経期:月経1~3日以内の出血量が多い時期,卵胞期:月経終了後6日以内の心身ともに安定した状態の時期,黄体後期:月経1週間程前のPMS症状により心身に不調が出てくる時期の3つの生理周期にて計測をした.黄体前期に関しては黄体後期と同じくプロゲステロンが徐々に増えていく時期であるため本研究ではプロゲステロンの影響を最も受ける黄体後期のみ選択した.計測項目は%MV(%muscle volume:筋質量)・WBI(weight bearing index: 体重支持指数)・視床間距離(Finger Floor Distance:FFD)・体幹回旋角度・activeSLRを用いた.生理周期に関しては生理日管理アプリ(携帯アプリ)を使用し周期を管理した.統計処理は,Statcel4を用いて,各測定項目について月経期・卵胞期・黄体後期で違いがあるのか,一元配布分散分析にて比較した.有意水準は危険率5%未満とした.</p><p>【結果】</p><p>月経周期毎での計測結果では,FFD月経期:0.9±10.9cm,卵胞期:-0.5±8.5cm,黄体後期-0.5±4.3cm,WBI月経:95±13.5,卵胞期:111±12,黄体後期:106±8.8で優位さは見られなかった.</p><p>【結論(考察も含む)】</p><p>生理周期において身体機能の低下は見られないことが示唆された.しかし,WBI・SLRの項目においては卵胞期で高値を示している.卵胞期はエストロゲン値が高い時期であり,エストロゲンの働き(自律神経やホルモンの乱れを整える)により,交感神経・副交感神経の働きに均等が取れることでWBI・SLRの数値が高値を示したのではないかと考える.本研究結果では生理周期において身体機能の優位な差は見られないという結果となったが,対象者個人で変化を追うと身体機能に変化が見られている例もあった.今後の課題としては症例数を増やすと共に,今回の研究で測定できていない精神面(ストレスとの関係性)も調査することで生理周期が引き起こす心身機能の不調についてより認識を深められるのではないかと考える.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言の精神に基づき,対象者には研究の趣旨について説明し,書面にて同意を得た.個人が特定されないようプライバシーの保護に留意した.</p>

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こちらの論文では要約すると ・マクロ的には、生理周期における身体機能の低下は見られない ・ミクロ(個人)レベルでは変化が見られる ・症例数を増やすこと、精神面での調査も必要   という話。 https://t.co/80mDjTMp6P

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