- 著者
-
末吉 昌宏
- 出版者
- 一般社団法人 日本昆虫学会
- 雑誌
- 昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.1, pp.85-100, 2018
<p>シイタケ栽培地域の植生がキノコバエ類群集に及ぼす影響を明らかにするため,森林内の植生とキノコバエ類群集を調査した.また,菌床栽培施設のキノコバエ類群集を森林内のそれと比較した.大分県日田市内の菌床栽培施設3ヶ所,スギ・ヒノキ林9ヶ所(ホダ場3ヶ所を含む)および広葉樹林8ヶ所(ホダ場2ヶ所を含む)を調査地として,林内調査地の各所に10 m四方の1方形区を設置した.方形区内の胸高直径50 mm以上または樹高2 m以上の樹木の種と幹数,腐朽木体積,林床被度を記録した.マレーズ式トラップなど6種類の方法で採集されたキノコバエ類の属を単位とした非計量多次元尺度法による群集解析の結果は森林内の樹種構成や腐朽木量によってキノコバエ類群集が異なることを示した.原木シイタケ害虫であるナカモンナミキノコバエの分布はスギ・ヒノキ林ホダ場に集中していたため,生産現場で効果的に防除を行うことで被害が軽減すると考えた.森林内の根返りはシイタケトンボキノコバエの生息場所となっている可能性があるため,根返りが多く発生している林分に隣接する生産現場は警戒を要する.</p>