著者
山本 周平 細石 真吾
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.133-135, 2010-09-25

Alate individuals of a tropical fire ant, Solenopsis geminata, were found by the first author on the ship "Ogasawara-maru", which traveled from Chichi-jima (the Ogasawara Islands) to Tokyo. This harmful species is known to occur in Japan, but records have hitherto been limited to isolated islands such as Iwo-jima (the Ogasawara Islands) and Okinawa-jima (the Ryukyu Islands). Since the liner anchored close to Iwo-jima just before that cruise, when it was possible that individuals of the species flew onboard. The discovery suggests the likelihood that the ant has been unintentionally introduced to Chichi-jima and even to the mainland of Japan.
著者
神保 宇嗣
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.73-86, 2017-04-05 (Released:2019-04-05)
参考文献数
18

This is a step-by-step guide for digitizing and publishing insect specimen collection data through the Internet, with a brief review of the current situation of specimen data sharing networks both in Japan and worldwide. Nowadays, web-based database systems are becoming the standard method for publishing specimen collection data. The Global Biodiversity Information Facility (GBIF) is the most important global network, whereas the Science Museum Net (S-Net) is the museum specimen information network in Japan. During the data digitization process, we should focus on the data format adopted by these networks. A set of standard vocabulary, such as Darwin Core and Ecological Metadata Language, is available to describe data item names and metadata, respectively. We should also consider how to specify each record using identifiers in the Internet. A set of three codes, including the institution code, the collection code, and the specimen catalog number, is used as a standard identifier to specify a specimen in a museum collection. Quality control is the most time-consuming task in the digitization process. Functions of spreadsheet software and special tools for data cleansing can streamline the quality control process. Furthermore, we consider the terms of data usage. Recently, data releasing as open data has been recommended in the biodiversity field. The Creative Commons License is used as the standard license in GBIF and S-Net. Insect specimen collection data, written in standard format with proper metadata and published openly, can facilitate and promote data reuse and can be easily shared via networks such as GBIF and S-Net.
著者
田中 誠二
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.113-121, 2013-04-05

コガネムシの1種,Lepidiota mansuetaは,インド,アッサム州を流れる大河,バラマプトラ川に形成された世界最大の中州島,マジュリ島において2008年以降に個体数を急増させ,サトウキビをはじめさまざまな作物の根茎を食害し,農作物に深刻な被害をひきおこしている.筆者は2012年11月にこの島を視察し,このコガネムシの生態と被害の状況などに関する情報を収集した.この論文は,L.mansuetaの生活史,被害の状況,防除対策,問題点,今後の計画と展望について報告する.また生活史や行動パターンが,この種に似ている日本の沖縄県宮古島におけるケブカアカチャコガネDasylepida ishigakiensisと比較し,生態や防除対策に関して論議する.
著者
渋谷 園実 桐谷 圭治 福田 健二
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.19-31, 2017-01-05 (Released:2019-01-05)
参考文献数
60

クロツヤヒラタゴミムシは,日本全国に分布し,幅広い標高に生息する森林性の種で,生息地の変化に鋭敏な反応を示すことから,生物指標種として期待されている.しかし,その生態については不明な点が多い.そこで,本研究では,本種の生活史を明らかにするため,千葉県柏市の里山で2012年4月から2013年4月の期間,32個のピットフォールトラップで44回の定期調査をした.定期調査に加え合計196個のトラップを使用して6月と7月,9月,10月に拡大調査を実施した.さらに,本種の飛翔の有無を確認するために,2013年に年間を通じマレーズトラップ(3基),衝突板トラップ(10基)を設置した.定期調査で捕獲した1,272個体のうち142個体を解剖し,生殖器官の成熟度と飛翔筋の経時的変化を調べた.また,体長と後翅長については,拡大調査で捕獲した901個体を測定した.本種は,5月に新成虫が出現し,7月までの間は未成熟で活動性は低い.その後10月までは活動を停止することから,夏眠すると考えられる.秋に短期間で斉一的に性成熟し,活動性が高まり多数捕獲される秋繁殖型の種である.活動最盛期の蔵卵数は平均109個で,卵サイズはほぼ斉一の小卵多産型である.後翅は長翅型であるが,体長および前翅長に対する後翅の相対比率が小さく,飛翔筋は認められなかった.さらに,マレーズトラップと衝突板トラップで捕獲されなかったことより,長翅型だが飛翔しないと考えられる.本研究は,フィールド調査と解剖を組み合わせたことにより,生殖器官の成熟度や飛翔筋の発達状態などの経時的変化を把握し,本種の生活史の解明に寄与した.これらの知見は,今後,近縁種との比較研究の基礎的資料となるばかりでなく,本研究で採用した方法は,オサムシ科甲虫の生活史に関する知見を蓄積する際に活用できる.
著者
湯川 淳一 宮田 正
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, 1999-12-25
被引用文献数
1
著者
矢島 稔
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.106-117, 2015-10-05 (Released:2019-04-25)
参考文献数
5

(1) 皇居内に幼虫を放流し40年にわたって羽化したヘイケボタルとゲンジボタルの個体数の変化を記録した.放流終了後もホタルとカワニナが世代を重ね,個体数を変動させながらも個体群が維持される生息環境の復元に成功した.(2) ゲンジボタルを野外の水槽で飼育した孵化幼虫の成長の変異に基づき,1年で羽化する個体に加え,羽化するまでに2年以上を要する個体が存在する可能性を指摘した.(3) 関東地方に生息するゲンジボタルは越冬後体長が30mmに達した幼虫が流れから上陸するのは4月中・下旬に限られる(日長時間が13時間以上の雨の夜).この生活史は餌のカワニナの繁殖・生存と密接に関連していると考えられる.
著者
杉本 美華
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.17-29, 2009
参考文献数
34

日本には約50種のミノガ科が生息しており,幼虫の携帯型の巣筒であるミノは大きさや概形,表面に使われる素材等の特徴で属あるいは種までの同定が可能である.成虫が脱出後の空になったミノの保存性が高いことから,ミノでの同定によって過去の生息範囲を推測することができる.若齢幼虫期のミノは,形態が単純で種の特徴が十分現われていないために正確な同定は期待できず,これまで主に中齢幼虫期から終齢幼虫期のミノが同定に用いられた.しかし,日本産のミノガについて,このような識別形質を含むミノの形態の詳細な記載とその比較はこれまでほとんど行なわれてこなかった.そこで本研究では,ミノの形態から属あるいは種の同定を容易にすることを目的として,日本産ミノガ科23属30種について,成長した幼虫あるいは終齢幼虫のミノの写真を示し,その形態的特徴と蛹化状況を記述するとともに,これまで発表されていなかったミノによる種や属の検索表を2論文に分けて発表する.第2報では,害虫として注目されている種やレッドデータにリストアップされている種を含めた大型種10属11種について記載を行なった.その結果,ミノの本体は円筒形,紡錘形,または円錐形で,表面には種特異的な被覆物がつけられていた.中齢ないし老齢幼虫期のミノは,種や属を同定するための有効な特徴を備えており,これらの特徴に基づいて,30種についてミノの検索表を付けた.
著者
杉本 美華
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-15, 2009
参考文献数
26

日本には約50種のミノガ科の種が生息しており,成長した幼虫の携帯型の巣筒であるミノは大きさや概形,表面に使われる素材等の特徴で属あるいは種までの同定が可能である.成虫が脱出後の空になったミノの保存性が高いことから,ミノによる種の同定によって過去の生息範囲を推測することができる.一方,若齢幼虫期のミノは,形態が単純で種の特徴が十分現われていないために正確な同定は期待できず,これまで主に中齢幼虫期から終齢幼虫期のミノが同定に用いられた.しかし,日本産のミノガについて,このような識別形質を含むミノの形態の詳細な記載とその比較はこれまでほとんど行なわれてこなかった.そこで本研究では,ミノの形態から属あるいは種の同定を容易にすることを目的として,日本産ミノガ科23属30種について,成長した幼虫あるいは終齢幼虫のミノの写真を示し,その形態的特徴と蛹化状況を記述するとともに,これまで発表されていなかったミノによる種や属の検索表を,2論文に分けて発表する.第1報では原始的な小型ないし中型種の中で比較的普通な13属19種について記載を行なった.その結果,ミノの本体は円筒形,紡錘形,円錐形または管状で,表面には種特異的な被覆物がつけられていた.中齢ないし老齢幼虫期のミノは,種や属を同定するための有効な特徴を備えていた.
著者
那須 義次 村濱 史郎 坂井 誠 山内 健生
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.89-97, 2007-12-25
参考文献数
33
被引用文献数
2

2002年から2006年にかけて,日本各地の鳥類の巣・ペリットおよび哺乳類の糞を調査し,ヒロズコガ科ヒロズコガ亜科に属する4種の蛾の発生を確認した.イガが島根県出雲市と大阪府河内長野市のツバメの巣,ウスグロイガが大阪府寝屋川市のハイタカのペリット,マエモンクロヒロズコガが愛媛県宇和島市のシジュウカラの巣,長野県飯綱町のノスリのペリット,小笠原諸島父島のイエネコの糞および鹿児島県奄美大島のイエネコかイヌの糞,アトキヒロズコガが和歌山県橋本市の雑木林に設置したハイタカのペリットを用いたトラップから羽化した.本報告は,日本においてシジュウカラの巣,鳥類のペリットおよび肉食哺乳類の糞から発生した蛾の初めての記録となった.幼虫はいずれも巣・ペリットおよび糞中のケラチン源(羽毛,毛など)を摂食していると考えられた.今回の調査結果と文献記録から市街地に造られたスズメ,コシアカツバメ,ツバメとカワラバトの巣が毛糸や毛織物害虫のイガの野外における重要な発生源であり,こられの巣からイガが家屋内に侵入することが推察された.
著者
永幡 嘉之 越山 洋三 梅津 和夫 後藤 三千代
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.104-112, 2013-04-05

電柱から回収されたカラスの巣から,ハナムグリ亜科の空の土繭2個と幼虫の死体1個体を発見した.この昆虫種および巣の持ち主の鳥種を同定するため,土繭の中に残っていた蛹殻,幼虫の死体,および巣材からDNA試料を抽出した.昆虫種については,ミトコンドリアDNAのCOI領域を分析対象とした.まずコウチュウ目用のユニバーサルプライマーセットを用いてPCRを行い,その後ダイレクトシーケンス法でPCR産物の塩基配列779bpを決定することで種同定した.鳥種については,ミトコンドリアDNAのチトクロームb領域を分析対象とした.ハシブトガラス,ハシボソガラス,ミヤマガラスの各種に特異的なプライマーと全種に共通なプライマーを用いてPCRを行ったのち,そのPCR産物のポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い,増幅されたバンドの鎖長でカラスの種類を判定した.その結果,土繭と幼虫の死体の計3個体は全てアカマダラハナムグリであり,巣の主はハシボソガラスであることが判明した.また,これらのアカマダラハナムグリ3個体で2つのハプロタイプが識別されたことから,少なくとも2個体のメス成虫がこの巣に産卵したことがわかった.アカマダラハナムグリは,これまで猛禽類など動物食性鳥類の比較的大型の巣内で幼虫が腐植土や雛の食べ残しを餌として発育することが知られていたが,雑食性で比較的小さい巣を作るハシボソガラスの巣も繁殖資源として利用していることが,今回はじめて明らかとなった.
著者
岡本 素治
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.263-275, 2011-10-05

ヒラズゲンセイの配偶システムについて,羽化脱出直後からの行動観察に基づいて概要を明らかにし,あわせて生活史に関して得られた知見を報告し考察した.ヒラズゲンセイはキムネクマバチに寄生し,成虫は,長い擬蛹期と蛹期を経て,近畿地方では5月の末から6月の中旬に出現する.羽化してクマバチ巣から出ると,雄は特徴的な姿勢をとり,恐らくフェロモンを放出して雌を呼ぶ(コーリング行動).雌は,羽化脱出してしばらくすると飛び立ち,雄のいる巣を探索する.数10m離れた遠方から匂いを頼りに雄の周辺に飛来するのは容易なようであるが,そこから雄がいる巣の場所に到達するには時間がかかる.特に,雄がコーリング行動を止めると,雄のそばに到達するのに要する時間は著しく増大する.雌が雄のそばに至ると交尾が行われるが,通常のマウンティングに先立ち,雄が雌の上に逆向きに重なる特異な行動パターン(「逆マウント」と名付けた)が見られた.交尾がすむと,雌は産卵のためにクマバチ巣内に侵入しようとするが,クマバチによるさまざまなレベルの抵抗を受ける.侵入・産卵に成功した雌は,巣坑内で卵を防御する位置にとどまる.雄も雌に続いて巣坑内に侵入するが,その後も午前中は巣坑外に出てコーリングを行う.2週間程度で孵化した1齢幼虫は,クマバチの毛に大腮でしがみつき,分散していく.トウネズミモチの花の雄蘂の上で訪花活動を行うクマバチを待つヒラズゲンセイの1齢幼虫を発見し報告した.
著者
税所 康正
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.185-188, 2012-07-05 (Released:2018-09-21)

My website "Cicadae in Japan" was awarded the 2008 Japan Entomological Society Akitsu Prize. This site introduces cicadidae-list of Japanese cicadas, explanations, photographs and calling songs of each species.
著者
横田 智 山尾 僚 鈴木 信彦
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.252-263, 2012-10-05

ワーカー多型の進化とその生態学的意義を解明するために,ワーカーに二型(メジャーおよびマイナーワーカー)がみられるオオズアリの分業体制を定量的に解析すると共に,メジャーの重要性が高い餌条件下で,カースト比やメジャー形態の可塑的変化が生じるのかを検証した.室内でサイズの異なる餌(大きい餌:フタホシコオロギ成虫,小さい餌:大きい餌を凍結粉砕したもの)を与え,餌場に現れたワーカーの個体数やメジャー比,行動様式,餌の解体の有無などを観察した.大きな餌を与えた場合,メジャーが餌場に多く現れ,マイナーが運搬行動に従事し,メジャーが解体行動に従事するという明確な分業がみられた.メジャーがいるコロニーでは,ほとんど場合餌が解体されたのに対し,メジャー不在のコロニーでは解体が生じたのはわずかであり,いずれも女王によるものであった.63日間,大きな餌を与えたコロニーと小さな餌のみを与えたコロニーのメジャー比及びメジャーの頭幅を比較したところ,メジャー比には違いはみられなかったが,頭幅には餌の大きさに相関した違いが生じた.腹部に栄養を貯蔵したメジャーがいるサブコロニー,貯蔵していないメジャーがいるサブコロニー,メジャーがいないサブコロニーをそれぞれ飢餓条件に置いて生存率を記録した結果,貯蔵したメジャーがいるコロニーが最も生存期間が長かった.以上の結果から,オオズアリの採餌におけるワーカーの明確な分業体制とメジャーによる食物貯蔵機能が明らかになり,メジャー形態の可塑的変異も確認された.メジャーカーストは餌の解体や栄養貯蔵に重要な役割を担っており,餌資源の獲得や維持に大きく貢献していると考えられた.
著者
高橋 佑磨 渡辺 守
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.13-17, 2008-03-25
被引用文献数
2

アオモンイトトンボの雌には,雄に似て鮮やかな青緑色の個体(雄型雌)と,隠蔽的な茶色の個体(雌型雌)の2型が出現する.この色彩2型に対する雄の配偶者選好性は学習によって可逆的に変化するとされてきたが,どのような経験が学習に関与するのかは明らかにされていなかった.羽化直後から雌と接触させずに飼育したアオモンイトトンボの雄(未経験雄)に対し,雄型雌と雌型雌を呈示する二者択一実験を行ったところ,雄の選択に偏りは認められず,雌に対する雄の選好性に生得的な偏りはないと考えられた.次に,未経験雄を,午前中,1頭の雌とともに小さなケージに入れ,その日の午後,または翌朝に同様の二者択一実験を行った.同居中にその雌と交尾した雄は,午後の二者択一実験で,同居していた型と同型の雌を選択したが,雌の拒否のために交尾できなかった雄の選択性には偏りが認められなかった.また,翌朝に行った二者択一実験では,同居中に交尾した雄の選択性に偏りが認められなくなった.したがって,雌の色彩2型に対する雄の選好性は,交尾の経験により変化し,一晩で消滅することがわかった.
著者
村田 浩平 土屋 守正 増島 宏明
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.75-87, 2007-12-25

太平洋上空を浮遊する昆虫相に関する調査をこれまで報告例のない1月から3月にかけて東海大学海洋調査実習船望星丸により1999年,2002年,2003年の3航海実施するとともに,独立行政法人海洋研究開発機構が運行する海洋地球研究船みらいにより2005年に1航海実施し,以下のような結果を得た.1.全航海で得られた海上を浮遊する空中移動性昆虫の目別個体数は,多い順にハチ目,ハエ目,カメムシ目,チャタテムシ目,アザミウマ目,コウチュウ目であり,そのほとんどが体長1mm前後の微小な昆虫であった.2.得られた昆虫の個体数は,主な分散源と考えられるオーストラリア大陸やニューギニア島近海で多かった.また,陸地から400km以上離れた海上で得られることもあったが,多くが陸地から数十キロ以内で得られた.3.海洋上空で昆虫が得られる条件として,最も近い島から風が吹いていること,海洋上空で昆虫が得られる傾向が見られた.また,風速との関係では無風時,強風時には得られない傾向が見られた.4.航路によって得られる昆虫の個体数には違いが見られ,日本から南東への往復航路では他の航路に比べて少ない傾向が見られた.5.イチジクコバチ科の1種は,ニニーゴ島沖120kmの海上で得られ,コバチ上科の1種,アザミウマ科の1種は,ニューギニア島から40km離れた海上で生存状態で得られていることから,これらの種は,島嶼間を分散する可能性があることが示唆された.6.港に停泊中に得られた昆虫の目構成は,海洋上空とは異なり,ハエ目,カメムシ目,ハチ目の順で多く,環礁で少なく火山島で多い傾向が見られた.7.甲板では,アカアシホシカムシ,ヒメアケビコノハ,トゲハネバエ科の1種,ツヤウミアメンボ,ハネアリなどが得られ,これらは海洋島が点在する海域では,島嶼間を分散する能力を持つことが示唆された.
著者
杉浦 真治 深澤 遊 山崎 一夫
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.143-144, 2002-12-25 (Released:2018-09-21)
参考文献数
6

Platurocypta punctum (Stannius) (Diptera: Mycetophilidae) was firstly recorded from Japan based on the adult specimens emerged from a fruiting body of Fuligo septica (L.) (Myxomycetes: Physarales: Physaraceae). We observed the larvae feeding on spores within the fruiting body at Kamigamo Experimental Forest in Kyoto, central Japan. P. punctum may be closely associated with slime molds.
著者
河上 康子 村上 健太郎
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.59-66, 2014-04-05 (Released:2019-04-25)
参考文献数
27

1996年から2002年の期間に海岸性甲虫類の調査を行った,播磨灘・大阪湾・紀伊水道沿岸部の43地点の海浜について,それぞれの面積および孤立度(近接する海浜までの距離)と,海岸性甲虫類の種構成の関係について解析を行った.海浜の面積を説明変数に,海岸性甲虫種の種数,および出現した全甲虫種の種数を目的変数にした単回帰分析の結果,いずれも有意な決定係数がえられ,面積が広いほど出現種数が増加する傾向が見られた.しかし,海岸性種数,全種数ともに決定係数は弱く,面積以外の要因も種数に影響する可能性が示唆された.さらに,調査地点のうち3地点以上の海浜から出現した22種の海岸性甲虫種について,種の在/不在データを目的変数に,海浜の面積と孤立度を説明変数にしたステップワイズ変数選択によるロジスティック回帰分析を用いて解析し,海岸性甲虫の在否に海浜の面積や孤立度が影響するかを検討した.その結果,9種が面積によって有意に説明され,同様に孤立度により1種が有意に説明された.
著者
新部 公亮
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.96-104, 2012-04-05

『どくとるマンボウ昆虫記』は,多くの若い昆虫学者にとって,昆虫学を志すきっかけとなった名作である.その作者である北杜夫氏は,2011年10月24日に84歳で亡くなられた.北杜夫氏の追悼の意味も込めて,一風変わった博物館施設である「マロニエ昆虫館」の人文学的展示法と「どくとるマンボウ昆虫展」について紹介した.2006年に開設された「マロニエ昆虫館」は,栃木県県民の森内の遊休施設を利用した展示施設である.その人文学的展示テーマの中から今回は,「ギリシャ神話の中の昆虫たち」と「ことわざ・格言・言い回しの中の虫たち」の二つを紹介した.「どくとるマンボウ昆虫展」は,この人文学的展示の延長であり,全国19会場で開催され,軽井沢会場では平成天皇もご覧になった.
著者
佐藤 隆士 鈴木 祥悟 槙原 寛
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.46-49, 2006-06-25
参考文献数
15
被引用文献数
1

Anthracophora rusticola Burmeister is a scarabaed beetle threatened about its decline in Japan. Recently, the founding of larvae or pupae of the beetle from the nest of raptors, especially Honey Buzzard Pernis apivorus Taczanowski, have been repeatedly reported. These founding imply that the beetle would specifically breed in the raptor's nest and that the decline of the beetle, might be caused by the reduction of the breeding of raptors in Japan. In this study, we surveyed two nests of Honey Buzzard to clarify the nest utilization pattern of the beetle. One of them had been confirmed to be annually used by raptors for their breeding, and the other seemed not to be used by raptors recently. One dead body of adult and 23 cocoon shells of the beetle were discovered from the former nest. All cocoon shells were found from lower part of the nest where was relatively dry compare to upper part. None was found from the latter nest. We discussed breeding pattern of beetles on raptors nests.