著者
仁平 典宏
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.98-118, 2012

今回,東日本大震災で活動するボランテイアの数は,阪神淡路大震災よりも少なかったことが指摘され,その理由を,政府による市民セクターの抑圧に求める議論が多い.この議論形式は阪神淡路大震災時に作られたものだが,今回,単純にそれを反復するわけにはいかない阪神淡路大震災時が行政の過剰統治によって特徴付けられる開発主義の果てに生じたのに対し,東日本大震災は規制緩和と再分配の放棄によって特徴づけられるネオリベラリズムの果てに生じたものだからだ.ベクトルは逆を向いている.以上を踏まえてボランティアの停滞の背景を考える.阪神淡路大震災のパラダイムでは, ①行政の抑制,及び,② NPOの低い経営力が原因とされるが,実際には, ①行政の損壊と地域の疲弊,及び,②市民セクターの二重構造化と国内NPOの活動基盤の不全という1995年以降に形成された要素が,有力な原因として浮かび上がる.ボランティア・NPOの活性化やそれによる当事者中心の活動は,公的領域の単純な削減ではなく,その適切な補完・支援のもとで実現するものである.ボランティアNPOのポテンシャルは小さな政府を志向する方向ではなく,人々の社会権を普遍主義的な形で公的に保障していく方向に接続していくべきであるそのために,震災の支援活動で社会の亀裂を目の当たりにしてきた市民セクターが果たす役割は小さくないと思われる.

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CiNii 論文 - 二つの震災と市民セクターの再編:3.11被災者支援に刻まれた「統治の転換」の影をめぐって https://t.co/EG7J9BqcIQ
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