- 著者
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竹村 瑞穂
- 出版者
- 一般社団法人 日本体育学会
- 雑誌
- 日本体育学会大会予稿集
- 巻号頁・発行日
- vol.70, pp.32_2, 2019
<p> 2020年東京オリ・パラを目前にスポーツ界が揺れている。最も大きな話題の一つは、2016年に開催されたリオ五輪で金メダル(女子800メートル)を獲得した、キャスター・セメンヤ選手をめぐる性別問題であろう。</p><p> この問題をスポーツ哲学的側面から読み解くと、異なる道徳的価値の衝突が存在することが見て取れる。スポーツにおける公平性という価値と、あるがままの生をまっとうし、自身の性自認を尊重するべきという、基本的人権にかかわる普遍的な価値である。同様に道徳的価値の衝突をめぐる問題は、義足選手の五輪参加やドーピングの検査手法をめぐる問題などにも見受けられ、スポーツ社会の在りようそのものを揺るがす事態となっている。</p><p> 本発表では、スポーツ・ジェンダー問題を端緒として、スポーツ界が直面している身体の多様性についてどう向き合うべきか言及したい。スポーツ界が許容するべき不正義とは何か、そして、スポーツ社会の再構築に向けてどのような対応が望ましいのか、スポーツ哲学的視点からの提示を試みる。</p>