著者
町田 樹
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.38_2, 2017

<p> フィギュアスケートは、氷上においてジャンプやスピン、ステップなどの卓越した「身体技術」に加え、思想や感情、物語を体現するための「表現技術」を競うスポーツである。基本的に「滑る」、「跳ぶ」、「回る」等の動作で構成されるフィギュアスケートだが、それらの動作を駆使して発揮される一連のパフォーマンスは、ときに「踊る」、「表現する」という動詞によって言い表される芸術的な動きの連続性として捉えられる。では、なぜ人はフィギュアスケーターの演技に美的な価値を見出すのであろうか。その理由の一つとしては、長い歴史の中で様式化されたフィギュアスケート特有の動作と音楽の間に、強力な相関関係が成立しているからであろう。本発表では、実際に発表者による自作振付の映像を用いながら、フィギュアスケーターの身体技術と音楽の密接な関係性を中心に、分析を試みていきたい。なお、発表者はフィギュアスケーターとしてのキャリアを23年間継続させており、現在プロフィギュアスケーターとしても活動を展開している。従って、本発表は研究者の観点と共に、フィギュアスケートの実演家および振付家の視点からも見解を提示するものである。</p>
著者
岡田 泰徳
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.83_1-83_1, 2017

<p> 「アメトーーク!」というバラエティ番組は、2006年から放送が開始され、現在では週2回のペースで放送されるほどの人気を誇っている。同番組は、「くくりトーク」と呼ばれる、ある共通点や類似点をもったお笑い芸人たちが、そのテーマに沿ったエピソードを持ち寄り、トークを繰り広げるという形式が多く見られる。特に「学校」や「部活動」、「スポーツ」に関して共通点があるものをテーマにした回は多く見られ、人気が高い。当番組では、テーマにくくられた出演者が、番組後半にかけて、お互いをフォローし合うなど、一体感が強まる様子が見られる。このよう場面に関して、中島ら(2013)は、「人々は集団へ所属することを通して、内集団に同一視し、個としての自分ではなく集団の一員としての自分を意識するようになる」と述べており、その過程を経て人々は「集団アイデンティティを獲得する」(p.162)としている。本研究では、「アメトーーク!」の「くくりトーク」に注目し、スポーツがキャラ化し、他者との相互作用の中でアイデンティティが消費される現代社会の特性について検討してみたい。</p>
著者
森 克己 山田 理恵 渡邉 修希 蔭山 雅洋
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.276_1, 2018

<p> 高校野球は、日本固有の形態をもつスポーツ文化である。また、高校球児=丸刈りというイメージが広く国民全般に定着している。例えば、2016年3月に開催された選抜高等学校野球大会に21世紀枠で出場し選手宣誓した小豆島高校の主将が長髪であったことが大きな話題となったように、他の競技では選手の頭髪が自由であるのに対し、野球だけが選手の頭髪は丸刈りであることが当然視されている。このことは、高野連には高校球児の頭髪を丸刈りとする明文の規定がないにもかかわらず、高校の野球部員や指導者が高校球児=丸刈りという慣習法的なルールにとらわれてきた結果であると考えられる。また、その背景には、精神の鍛練がスポーツの重要な使命であることを説いた飛田穂洲の著作の中にみられる選手の頭髪についての記述のように、野球を単なるスポーツではなく精神修養を伴う「野球道」の思想等とも関連づける考え方の存在があると言える。以上のことを前提として、本研究では、高校球児の髪型=丸刈りという慣習法が成立した経緯やその慣習法の成立構造について、文献・資料及びアンケート調査結果に基づき考察する。</p>
著者
宮原 祥吾 原田 健次 新海 陽平 稲葉 泰嗣 荒牧 勇
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.111_1, 2017

<p> 近年、脳の局所的な構造が運動・認知スキルと関連するという報告が相次いでいるが、スポーツ選手を対象とした報告は少ない。そこで本研究は、野球熟練者の投球コントロール能力と関連する脳部位の構造的特徴を明らかにすることを目的とした。C大学野球部のピッチャー9名(右利き)に対し、的の中心点を狙った右投げ投球、左投げ投球をそれぞれ30球ずつ行わせた。それぞれの条件について的中心からの平均距離を計算した。すべての被験者のT1強調MRI脳画像を計測し、Voxel Based Morphometry解析により、それぞれの投球条件において、的中心からの距離と脳灰白質容積の相関のある脳部位を同定した。その結果、いずれの条件においても、的中心からの平均距離と右頭頂葉の灰白質容積に有意な正の相関関係が認められた。頭頂葉は、空間的な運動制御に重要な役割を果たす脳部位であり、投球コントロール能力に頭頂葉の構造的発達が重要であることが示唆された。</p>
著者
釜崎 太
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.23_2-23_2, 2016

<p> スポーツを文化として根づかせる&mdash;このテーマに関して、参考にすべき模範的事例としてドイツのスポーツを思い浮かべるひとは少なくないだろう。例えば、地域スポーツの振興をひとつの理念として発足したJリーグ、あるいは人々の生活の充実に寄与することを目指した総合型地域スポーツクラブ。それらの模範像がドイツに求められてきたことは周知の通りである。スポーツクラブの地域性や公共性だけではなく、観客動員数世界一と言われるブンデスリーガの潜在的ニーズを掘り起こしているのも、地域のクラブである。では、私たち日本人は、ドイツの何に学ぶことができるのか。</p><p> 本報告では、第一に、大島鎌吉がみたであろうドイツの原風景について、カール・ディームとスポーツクラブとの関連から報告する。第二にしかし、大島が理想をみていた当時とは異なるディーム像をめぐって、ドイツ国内で大きな波紋を呼んでいる「ディーム論争(Diem-Debatte)」の現状(釜崎の分析ではなく)を伝える。第三に、その論争を超えて、日本にスポーツを文化として根づかせるために必要ないくつかの論点に言及したい。</p>
著者
大島 卓馬 村山 敏夫
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.163_3-163_3, 2016

<p> 九州地震によって改めて静脈血栓塞栓症予防の必要性が問われている。運動やマッサージは効果的な予防法だが、これらは血流鬱滞を抑制し血液凝固を防ぐことを目的としている。血流を促すにはこれらの方法以外に、日常生活の中でも取り入れる手立てがある。そのひとつが入浴であり、適切な入浴法は血流鬱滞を予防する最適な手段である。また、近年では血流増加を謳う多種多様な入浴剤が開発され、今では入浴シーンに欠かせない程に存在感を示している。一方で、心身が不調をきたすと入眠潜時に影響を及ぼすとの報告もあり、ここでも適切な入浴が質の高い眠りの確保と入眠を促すことが知られていることから、入浴の重要性が再認識できる。そこで本研究は、抹消血管血流量に着目した様々なパターンの入浴法における生体反応を観察する。入浴法は自宅でのシャワー浴、全身浴、重炭酸を用いた全身浴として、抹消血管血流量、血圧、体温などの生体情報を収集する。さらに浴後からの入眠を、脳波計を用いて観察し、抽出されたデータを用いて最適なコンディショニング方法を提案する。</p>
著者
谷本 道哉 下代 昇平
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.132_2, 2017

<p>背景・目的:スポーツチャンバラはレクリエーション性の高いスポーツであり、少年から高齢者まで楽しみながら実施することが可能である。乱取り形式で行えば、ゲーム感覚で楽しみながら、心肺持久負荷および下肢筋群の筋力負荷を相応に与えることが期待できる。本研究では、継続的なスポーツチャンバラの実施が中年男女のメタボ・ロコモリスク指標に与える影響を明確にすることを目的とする。</p><p>方法:平均年齢の中年男女11名を被験者とし、A群6名は週3回11週間の乱取り形式のスポーツチャンバラを実践し、B群5名は運動非介入対照群とした。乱取りは1分×10ラウンドとし、ラウンド間インターバルは30秒とした。12週間のウォッシュアウト期間をおき、A群とB群の介入内容をクロスオーバーさせた。各介入期間前後に左右上下肢筋力、最大酸素摂取量、血液性状の測定を行った。</p><p>結果:スポチャン介入により、上肢および下肢伸展筋力はともに利き腕利き脚側でのみ有意に増大した。最大酸素摂取量は平均で約15%増大した。また血液性状においてはHDLで有意な増大がみられた。</p>