著者
廣田 拓
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.54-66, 2015

本稿は、イギリスの社会学者A・ギデンズのモダニティ論で言及されている、専門家と非専門家の出会いの場を意味する、「アクセス・ポイント」という概念を検討する一論考である。アクセス・ポイントとは、モダニティを生きる人々が、特定のコンテクストを共有する(専門家などの)集団に所属すると同時に、そこを離れたところでは一般人として生活しているという両義性が顕在化する場でもある。本稿ではこのことを、自他の対面的/非対面的相互行為に現れる人称代名詞の観点から議論している。対面的な相互行為において、自他はともに双方の呼びかけに応答する〈あなた〉として現れると同時に、この関係性は相互了解的な〈ワレワレ〉性を帯びている。他方、各種マス・メディアなどを利用した非対面的な相互行為において、自己は他者を〈彼/彼女〉として対象化する一方で、この他者にとって、自己はその他大勢の中の一人として〈ヒトビト=大衆〉性を帯びて現れる。ギデンズのアクセス・ポイント概念は、こうした〈私〉の中に含まれる〈ワレワレ〉性と〈ヒトビト〉性を結びつける接合点としての意味をもつ。モダニティを生きる諸個人の実存的不安は、その実存の無根拠性を露わにする〈ヒトビト〉性を解消するべく〈ワレワレ〉性に人々を接近させる。ギデンズの議論は、それがモダニティを生きる現実から目を逸らす結果となることに注意を喚起し、この問題を乗り越えるための概念を提示している。

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