- 著者
-
赤川 学
- 出版者
- 日本社会学理論学会
- 雑誌
- 現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, pp.4-13, 2017 (Released:2020-03-09)
本論文は、性の多様性に関して以下のことを論じた。
第一に、セクシュアリティの社会学の問題構成は、多様である性が、いかにして、なぜ、性別二元制や異性愛主義に収斂するのかという問いであるとともに、doing gender / undoing gender、性の脱アイデンティティ化/再アイデンティティ化、脱医療化/再医療化が同時発生する現象を読み解くことにあるとした。
第二に、性差や性の社会・歴史・文化・言説的構築を強調する構築主義を理論的構築主義と、性に関わる言説を社会問題を構築するクレイム申し立て活動と捉える方法的構築主義とを区別した上で、両者を実践する英国の歴史社会学者ジェフリー・ウィークスの理論的変容を整理した。それは、性が社会や政治によって構築されるという〈受動性〉から、セクシュアリティを生きる人々が社会関係や親密性を再構築する〈能動性〉への転換である。
第三に、ウィークスの議論に刺激されつつ、英米における同性婚やシヴィル・パートナーシップの合法化を可能にする言説のレトリックを確認した。合法化を求める人たちは、異性愛カップルと同じ権利を要求する権利のレトリックに加え、家族形成や社会に対するコミットメントを強調する責任のレトリックを併用することで、保守派を取り込むことに成功した。
第四に、日本の同性婚をめぐる議論では、少子化対策という文脈が強く、やがて生殖や養育を生きる人と、そうでない人との間の「正義」や「平等」の問題が浮上しうることを指摘した。