著者
小林 峻 日下 博幸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p>2017年6月3日、ベトナム北部の都市ハノイで過去40年間で最高となる41.5℃を観測した。このような都市の記録的高温の原因として、地球温暖化や大規模スケールの異常気象といったグローバルスケールの現象だけでなく、フェーン現象や都市ヒートアイランド(UHI)といったローカルスケールの現象が指摘されている。しかしこれら先行研究は、都市の記録的高温に対するグローバルスケールおよびローカルスケールの現象の寄与をまとめて議論していない。そこで本研究は、2017年6月にハノイを襲った記録的高温に対して寄与していた異なる時空間スケール現象を、データ解析および数値シミュレーションにより調査し寄与を定量的に評価するものである。</p><p></p><p> まずWRFによる数値シミュレーションが2017年6月の記録的高温を再現できているか、NOAAの運営するClimate Data Onlineより得られる観測データと比較して評価する。気温や相対湿度、風向については観測値と変化傾向がおおむね一致した。次に観測データを用いて、ベトナム北部の気温の40年(1971-2010)変化傾向を調査した。その結果、1971年から2010年の40年間で0.908℃の気温上昇傾向が認められた。さらに数値シミュレーションを用いてUHIの寄与を定量的に評価したところ、6月2〜5日のハノイでは昼間では0〜+1.0℃、夜間では+2.0〜+4.0℃であった。一方、再解析データのNCEP-FNLを20年(2000-2019)分用いたデータ解析により、大規模スケールの異常気象の寄与を定量的に評価した。その結果、6月2〜5日は20年平均値を+4.0〜+8.0℃上回る暖気が西風によりハノイ上空に移流されていることがわかった。さらに、この気温の正偏差および西風がともに強かった場合にハノイで気温が上昇しやすいことも示唆される。最後に数値シミュレーションにより、6月2〜5日にはハノイの風上側でフェーン現象が継続的に発生し、昼間にはハノイ上空およびその風上側で混合層が顕著に発達していたことがわかった。なお地形の昇温効果は最大+3.0℃、平均+0.33℃であった。</p><p> 以上より、2017年6月にハノイを襲った記録的高温には、地球温暖化や暖気移流といった大規模スケールの現象から、フェーン現象やUHIといったローカルスケールの現象まで寄与していたと結論付けられる。</p>

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