- 著者
-
杉之原 真子
- 出版者
- 日本政治学会
- 雑誌
- 年報政治学 (ISSN:05494192)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.1, pp.1_36-1_56, 2017
<p>近年、モノの貿易だけでなく海外直接投資 (FDI) が経済グローバル化の重要な要素となった。1990年代以降は新興国からの投資が増大し、国内企業が持つ技術の流出や外国企業による市場の支配に関して、安全保障面から懸念も持たれている。経済成長につながる外資の誘致と、安全保障に配慮した規制の適切なバランスをとることは、各国で重要な政治的課題となっている。本稿では、2000年代半ば以降多くの先進国で新たな規制が導入されたことに着目し、米国と日本の事例を比較して、政策決定システムの違いが両国の政策決定に大きな影響を与えたと論じる。米国では議会主導で、外国企業による戦略的産業の買収を広範に規制する法律が制定されたが、その過程では、外国企業の買収を経済的理由から阻止したい他の企業が安全保障上の懸念を利用したことが、議会の外資脅威論を喚起した。一方日本では、官僚主導の審議会による漸進的な規制強化が行われたが、そのアジェンダ設定には敵対的買収への対抗策を設けたい経済団体が影響を及ぼしていた。</p>