- 著者
-
八木 貴信
- 出版者
- 日本森林学会
- 雑誌
- 日本森林学会大会発表データベース
- 巻号頁・発行日
- vol.131, 2020
<p>ここで扱う筋残し刈りとは,植栽列間を1列おきに刈り払うとともに,植栽木周囲を坪刈りして,刈筋間の刈残しからの植栽木への庇圧や物理的干渉を緩和する下刈り方法である。一部の篤林家の間で実施されてきたこの方法は諸特性に未解明な点が多いが,大きな可能性を持つ。まずこの方法は,植栽する人工更新エリアと刈残す天然更新エリアを水平分離しており,自然植生と共存的である。刈残し筋の適切な拡幅(=疎植化)と組み合わせれば,植栽で成林を担保しつつ,天然更新エリアで混交林化材料を蓄積できる。刈残し筋からの側圧は植栽木の幹形向上,ツル繁茂抑制に役立つ。雑草木を刈残すことはシカ害対策上も有利である。また低コストに下刈り回数を維持でき,植栽木へのアクセス路である刈筋の長期維持が容易なので,ツル切りなど形質不良対策に役立つ。本発表ではこの下刈り方法で不可避な植栽木の成長低下の程度について報告するが,熊本県人吉市の造林地での試験では,植栽3年後,幹形状比は「毎年全面刈り<隔年全面刈り<毎年筋残し刈り<無下刈り」だが,樹高は「毎年全面刈り≧隔年全面刈り=毎年筋残し刈り>無下刈り」で,今後の経過に期待が持てる結果となった。</p>