著者
八木 貴信
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>ここで扱う筋残し刈りとは,植栽列間を1列おきに刈り払うとともに,植栽木周囲を坪刈りして,刈筋間の刈残しからの植栽木への庇圧や物理的干渉を緩和する下刈り方法である。一部の篤林家の間で実施されてきたこの方法は諸特性に未解明な点が多いが,大きな可能性を持つ。まずこの方法は,植栽する人工更新エリアと刈残す天然更新エリアを水平分離しており,自然植生と共存的である。刈残し筋の適切な拡幅(=疎植化)と組み合わせれば,植栽で成林を担保しつつ,天然更新エリアで混交林化材料を蓄積できる。刈残し筋からの側圧は植栽木の幹形向上,ツル繁茂抑制に役立つ。雑草木を刈残すことはシカ害対策上も有利である。また低コストに下刈り回数を維持でき,植栽木へのアクセス路である刈筋の長期維持が容易なので,ツル切りなど形質不良対策に役立つ。本発表ではこの下刈り方法で不可避な植栽木の成長低下の程度について報告するが,熊本県人吉市の造林地での試験では,植栽3年後,幹形状比は「毎年全面刈り<隔年全面刈り<毎年筋残し刈り<無下刈り」だが,樹高は「毎年全面刈り≧隔年全面刈り=毎年筋残し刈り>無下刈り」で,今後の経過に期待が持てる結果となった。</p>
著者
成松 眞樹 八木 貴信 野口 麻穂子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌
巻号頁・発行日
vol.98, no.4, pp.167-175, 2016
被引用文献数
1

<p>カラマツコンテナ苗の植栽適期を明らかにするために,5月から11月の各月に苗を植え,翌月以降に掘り取って,活着と根,樹高,地際直径の成長を植栽月で比較した。植栽月は当年と翌年の成長に影響し,植栽月によっては根と樹高の成長が連関した。苗は各植栽月で97% 以上の活着率を示したが,秋植えでは根鉢からの根の伸長量が減少した。8月以前は地温が高く迅速に根が伸長し,10月以降は地温が低く根の伸長が抑制されたと考える。植栽当年の樹高成長は5月と6月の植栽でのみ明瞭だった。そのピークは各々8月と9月に現れ,根長成長ピークから1カ月遅れた。7月以降の植栽では,樹高成長が根長成長後に生じるカラマツの特性により,樹高成長開始前に秋を迎えたと考えられる。植栽当年11月の地下部重量は早い植栽月で大きく,植栽翌年7月までの樹高成長率と正の相関を示した。その結果,植栽当年11月にみられた樹高の差は,その1年後でも完全には回復せず,11月植栽苗の樹高は,8月以前の植栽苗より小さかった。本研究の結果は,カラマツのコンテナ苗は春から秋まで植栽可能だが,9月以降の植栽は冬季枯損や植栽翌年までの成長不良のリスクが高まる可能性を示唆している。</p>