著者
坪本 裕之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p>2020年4月7日に,新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の感染拡大防止を目的とした緊急事態宣言が政府より発せられ,全事業者への通勤者7割削減が要請された.多くの企業ではオフィスへの出勤制限とともに在宅勤務に切り替えられた.しかし5月の宣言解除以降,7割を超える企業が出社を前提とする体制に戻った.さらに再度の全国的な感染拡大を受けて,7月には再び出社抑制および時差出勤の推進が企業に対して要請された.今回のコロナ禍の特異性として,強制的な在宅勤務要請の期間の長さとともに,感染収束やワクチン開発の時期が想定できず,先行きに対する不透明さがある.東京のオフィスを取り巻く状況は非常に流動的である.</p><p></p><p> 2020年6月に企業のオフィスファシリティ担当者に対して,緊急事態宣言前後における働く場所についてのwebアンケート調査を行った.自社オフィスを中心として,自宅やサテライトオフィス,カフェなど働く場所の複数の選択肢があった宣言前に対して,宣言以降は感染防止のため,在宅勤務と時差出勤を含めたオフィス勤務に制約されている.</p><p></p><p> コスト削減を目的として,オフィス内でのモバイルワークを前提とするフリーアドレスの導入を検討している企業が増加し,加えて数年後には「ジョブ型」人事制度に切り替える企業事例が報道されている.しかし,このような就労環境を構築できるのは,ファシリティとICT,人事制度に精通した人材の存在と推進体制を組むことのできる企業である.加えて,成果主義を前提とした人事制度の策定にも,施策を進める時間が必要だ.</p><p></p><p> 対面接触によるコミュニケーションの強い制約も今回のコロナ禍の大きな特徴だ.多くの企業における現状の取り組みは,コミュニケーションの維持と出社比率のコントロールの間にあり手一杯の状況だ.在宅勤務が長い期間継続すれば,単純なオフィスワークの場としての意義を包含するオフィスを,対面接触の場に絞り再定義する可能性があり,住環境を補完するシェアオフィスも広域的に展開すると予測できるが,そもそも対面コミュニケーションの制約のもとでは,オフィスの意義やそれに伴う立地の変化が起こるとは考えにくい.</p>

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