著者
村山 良之 桜井 愛子 佐藤 健 北浦 早苗 小田 隆史 熊谷 誠
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2021, 2021

<p>1 学校防災の自校化を担う教員のための研修</p><p></p><p> 学校防災の自校化のためには,学校や学区の地形を含む地域の条件を把握してハザードマップの想定外まで含む読図が有効かつ必要である。しかし,このような地理学界の常識は,学校教員を含む一般市民にはまったく浸透していない。元々の専門や経歴が多様な発表者らは,地理学(地形学)の常識を活かして学校防災が向上するよう,この教員研修を提案するものである。</p><p></p><p> 発表者らは,2019年6月石巻市教育委員会防災主任研修会でワークショップの機会を得た(村山,2019)。自校を含むハザードマップ,地形図,地形分類図等を用いて共同作業を行うことで,受講した防災主任は読図力が上昇したとこを自ら認める等,成果をあげることができた(小田ほか,2020)。そこで,同様の研修を広くオンライン等でもできるよう,研修動画,ワークシートとその記入例等含む,プログラムを作成した。</p><p></p><p>2 オンライン研修プログラム</p><p></p><p> 上記ワークショップで得た成果および課題と,学校教員の実状を踏まえて,ガイダンスを含む6つの研修からなる講座「学区の地図を活用した災害リスクの理解」を作成した。</p><p></p><p> 対象ハザードは,土砂災害と洪水とし津波についても言及する。防災のために有益でかつ防災や専門知識を持たない学校教員にも理解を促しやすいことを念頭に,地形要素として,山地・丘陵地については傾斜の大小と崖および谷,低地については微高地(自然堤防,浜堤・砂丘)と後背湿地や旧河道を,取り上げることとした。いずれも土砂災害と水害に対する土地条件として重要な地形要素である。そして,それらの地形把握のために,山地・丘陵地(土砂災害)については地形図,低地(洪水)については地形分類図が有効であること,それぞれの地図の入手・閲覧方法,概要と読図法,さらにハザードマップと関連することを,学ぶ(研修2,3)。ハザードマップについては,有用で利用しやすい情報源であるとしてその不要論を廃し,結果のみではなく「科学的根拠のある目安」として利用すべきこと(研修0),ハザードマップの種類や入手・閲覧方法とその限界(想定外)について(研修1),そして研修2と3で学んだ地形とハザードマップが密接に関連することを踏まえつつ,想定外についても地形から合理的に把握できることを,学ぶ(研修4)。さらに,研修5では,これまでの研修内容を応用して,避難の合理的な方法を学ぶ。</p><p></p><p> </p><p></p><p>講座「学区の地図を活用した災害リスクの理解」の主な内容</p><p></p><p>研修0 ガイダンス</p><p></p><p>講座全体の構成,講座の背景と目的,ハザードマップとは,読図とは,「地形を踏まえたハザードマップ3段階読図法」</p><p></p><p>研修1 学区のハザードマップを読む</p><p></p><p>ハザードマップをインターネットで探す 重ねるハザードマップから読む ハザードマップの想定について(法律,前提) まとめ 演習 おまけ</p><p></p><p>研修2 学区の地形図を読む</p><p></p><p>地形とは 地形図とは(例:岩手県釜石市の一部) 地形図を読むためのポイント(方位,縮尺,地図記号,等高線,崖記号,谷線) 地形図と土砂災害ハザードマップ(谷と土砂災害,崖や急傾斜地とがけ崩れ,2019年台風19号) まとめ おまけ</p><p></p><p>研修3 学区の地形分類図を読む</p><p></p><p>地形分類図とは(低地内の微地形) 地理院地図で地形分類図を読む(断面図,微地形と起伏,洪水ハザードマップとの対応) まとめ 演習(自校の学区について,地形図と地形分類図から読み取れること) おまけ(低地部で地形分類図がない場合)</p><p></p><p>研修4 学区の地形からハザードマップの想定外も考える</p><p></p><p>ハザードマップと,地形図,地形分類図を読む(例:山形県庄内地方の土砂災害と洪水 2019年台風19号宮城県丸森町の浸水範囲,ハザードマップと地形分類図) まとめ 演習(自校の学区について,ハザードマップの想定外を考えて記述する)</p><p></p><p>研修5 学区内での避難について考える</p><p></p><p>緊急避難場所と避難所 まとめ 演習①(自校が緊急避難場所/避難所に指定されているか確認する) 演習②(大雨時の緊急避難場所までのルートを複数考える おまけ</p><p></p><p> </p><p></p><p> 2021年1月現在,本プログラムのインターネット公開準備中である。宇根寛氏,熊木洋太氏,黒木貴一氏,澤祥氏,鈴木康弘氏から,助言をいただいた。心より感謝申し上げる。</p>

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