- 著者
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杉江 あい
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- E-journal GEO
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.1, pp.102-123, 2021
- 被引用文献数
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<p>本稿では,バングラデシュを主なフィールドとするムスリマとしての立場から,イスラームとムスリムに関する学習のために次の3点を提案する.第1に,イスラームとムスリムに接する上で必要なリテラシーを高めること.ここでいうリテラシーとは,クルアーンなどの章句の理解にはアラビア語やイスラーム学の深い知識が必要であり,西洋のバイアスがかかった生半可な知識では誤解しやすく,一部の研究者やムスリムの間でも誤った解釈や恣意的な章句の引用などがなされていることに注意することである.第2に,イスラームとムスリムを切り離してとらえること.イスラームをムスリムの言動のみから解釈し,またムスリムの生活文化をイスラームに還元するアプローチは誤りである.第3に,イスラームにおいて重視される信仰や人格,現世での利点について説明すること.義務や禁忌を表面的に教えるだけでは,イスラームを特異視するステレオタイプから脱却できない.</p>