- 著者
-
町田 昌昭
- 出版者
- 国立科学博物館
- 雑誌
- 国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, pp.101-110, 1984
山形県沖の海深 200〜400m のいわゆるタラバとよばれる漁場でとれたノロゲンゲ, ホッケ, ガンコ, ザラビクニン, アカガレイなどから12種の吸虫を採集した(第1表)が, このうちの5種(2種は新種)について形態学的な記載と分類学的な検討を行なった。ガンコとザラビクニンからとれた Stephanostomum baccatum は北大西洋からバレンツ海, 北西北太平洋に広く分布する種である。ガンコからとれたもう1種の Stephanostomum は口吸盤に小さな棘が3列並んでおり, 近縁の S. microstephanum および S. tristephanum と比較して非常に細長い陰茎嚢と大きな虫卵をもつことなどで新種 S. ganko とした。ザラビクニンからとれた2種の Neophasis のうち N. oculatus はグリーンランド, バレンツ海, 北西北太平洋から知られている。もう1種は N. oculatus によく似ているが, 体形や腹吸盤・精巣・卵巣・陰茎嚢の位置などが異なることで新種 N. symmetrorchis とした。Allostenopera pleurogrammi は BAEVA (1968) が日本海のホッケから得て新属新種として発表したものであるが, 今回のホッケのほか釧路のタウエガジ, 気仙沼のアイナメからの材料を加えて形態学的記載と検討を行なった。その結果, 本種は POLYANSKII (1955) がバレンツ海のコオリメダマギンポなどから得て新種として報告した Helicometra insolita にきわめてよく似ており, おるいは同種とすべきかも知れない。