- 著者
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中村 桃子
- 出版者
- 関東学院大学経済学部教養学会
- 雑誌
- 自然・人間・社会 (ISSN:0918807X)
- 巻号頁・発行日
- no.45, pp.1-23, 2008-07
本稿では、メディアはことばによって想像の共同体をつくるという「テクスト共同体」(Talbot 1992)の考え方をスポーツ新聞に当てはめて、スポーツ新聞が事実の報道を超えて物語世界を構築していく手法を明らかにする。スポーツ新聞共同体の第一の特徴は、異性愛の男性が明確な階層構造を構成することで男同士の絆を深めている点である。選手と監督、勝者と敗者は極端に対比され、密着した上下関係に位置付けられている。命令形、断定形、男ことばの多用や戦争の比喩も共同体を男性化している。スポーツ新聞の第二の特徴は、その物語化とお笑い化である。出来事や人間関係は、過去から現在の歴史の中に位置づけられて、伝説や物語として描写される。一方で、くだらない語呂合わせやしゃれにあふれている。物語化とお笑い化は、どちらも読者を共同体から分離させることで、スポーツ新聞を、読者が自分のアイデンティティを介在させずに安心して消費できる媒体にしている。