著者
松森 堅治 西垣 良夫 前島 文夫 臼田 誠 永美 大志 矢島 伸樹
出版者
農業・食品産業技術総合研究機構農村工学研究所
雑誌
農村工学研究所技報 (ISSN:18823289)
巻号頁・発行日
no.209, pp.105-115, 2009-03

高齢者においては、加齢に伴い身体機能が低下し、日常生活能力も低下する。日本の人口動態において介護を必要とする人が加速度的に増加することが、高齢社会の進展に伴い予測されている。近年「健康寿命」という概念が提唱され、普及してきたことでも分かるように、元気で活動的に暮らすことができる期間をいかに延ばすかが大きな政策的課題となっている。適度な身体活動・運動、精神活動、社会参加が高齢者の様々な身体機能の低下を軽減する効果を有することは定説になってきている。本研究で対象にする農業労働については、歴史的には過酷な労働に伴う様々な健康影響について「農村医学」の分野において、解明が積み重ねられ、労働改善の努力もされてきた。戦後期、高度成長期前においては問題告発型の学問として栄養不良、過重労働、劣悪な労働・生活環境が与える健康状態、各種疾病を主要な問題としていたが、近年では農村の生活環境も激変し、基本的な生活形態は都市と大差なくなり、疾病構造も、都市と同様の過食、栄養過多、運動不足等から引き起こされる生活習慣病、著しい長寿化を達成した結果である高齢者の老人性疾患の増加、社会問題としては、都市部より急速に進展している人口構成の超高齢化に焦点が移行している。本研究では、高齢者の健康指標のデータを豊富に所有する長野県厚生連健康管理センターの健診データを用い、健康指標データと農作業体験の有無、生活習慣を総合的に検証する。それにより農作業に関わる頻度と高齢者の健康の関連を総合的に検証することを目的とした。なお、本報は農村工学研究所運営交付金プロジェクト研究「中山間地域における対流に伴う教育・保健等機能の評価手法の開発」において(財)日本農村医学研究所への委託により実施された研究の成果の一部である。

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