著者
鈴村 源太郎
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
農林水産政策研究 (ISSN:1346700X)
巻号頁・発行日
no.15, pp.41-59, 2009-06
被引用文献数
2

わが国の農村の中には、修学旅行などを通じた小中学生等の受け入れにより、地域活性化に役立てている地域がある。関連して、国では、小学生の農林漁業宿泊体験を進める「子ども農山漁村交流プロジェクト」事業が進められている。近年の修学旅行では「体験学習」の位置づけが高まっており、中でも関心の高い民泊を伴う「農林漁業体験」は、教育的配慮から「ホンモノ」を求める動きが強い。長野県飯田市と福島県喜多方市における事例分析によれば、受入農家や地域への波及効果として、様々な効果が確認されている。経済効果は、宿泊を含む体験料金収入が最大で年約50万円程度になっているほか、作業効率が向上した例もある。非経済効果としては、子供との共感から生まれる感動や手紙のやりとりから元気を得た農家が多く、地域の連帯感や活気などの副次的効果も確認されている。とはいえ、体験教育旅行は、時期的な集中や家族の協力、コストの見直しなど課題も多い。受入は小規模複合経営が中心であるが、現状では農業生産をしっかり行った上で、労働力の空き時間の範囲での実施を前提に取り組むのが望ましいと考えられる。「ホンモノ」の体験を提供するためにも、受入農家の農業生産を継統的に支える仕組みづくりが同時に必要とされる。本稿は、小中学生を対象とした体験教育旅行が、農業経営あるいは地域コーディネート組織に与える影響側面を実態的に明らかにするとともに、農村地域への経済的・社会的波及効果や今後の展望等について検討することを目的としている。

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