著者
鈴村 源太郎 Suzumura Gentaro 東京農業大学国際食料情報学部国際バイオビジネス学科 Department of International Biobusiness Studies Tokyo University of Agriculture
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.103-115,

日本の水田農業では,担い手の高齢化や個別経営の小規模性,コスト低減の要請などから,効率的な生産体制を望む声が高かった。そうしたなか,機械の共同利用を進めることで投資を抑制しながら,共同作業で地域の稲作の効率化を図ろうとする集落営農を推進する動きが近年活発化している。特に,2004年から実施された一連の米政策改革と,2007年から実施された水田・畑作経営所得安定対策による政策誘導により多くの集落営農が新設・再編されたことはよく知られている。ただ,2006年から2008年にかけて,これら政策インパクトによって急増した集落営農は,その多くが政策要件に合致させるための急ごしらえの組織(一部では組織の会計をプール計算せずに費用・販売収入などを組織内で農家ごとに個別計算していたことから「枝番(えだばん)組織」とも言われている)であったとされる。本論では,こうした集落営農急増期に焦点を当て,集落営農実態調査の個票の組み替え集計を行い,従前から存在する集落営農と,急増期に新設・再編された集落営農の構造論的な性格の違いを明らかにした。特に,本論では集落営農が従前から多かった北陸・山陰などの地域と同時期に新設・再編が急速に進んだ東北,関東・東山,九州における地域的構造差を踏まえながら,集落営農内における認定農業者の取り込み人数の違いや参加農家率と主たる従事者のいる割合などに焦点を当て,新設・再編組織における「集落ぐるみ性」の低さ,すなわち個別経営の寄せ集めとしての性格の強さを明らかにした。また,新設・再編組織の農地集積率に関する地域性,すなわち九州,東北,関東・東山などで,新規・再編組織の方が集積率が高いなどの地域が存在することなどについても統計的観点から確認をおこなった。なお本論は,同時期に急増した新設・再編集落営農組織の維持・発展に向けた支援策検討の基礎資料とならんことを目的としている。
著者
鈴村 源太郎
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
農林水産政策研究 (ISSN:1346700X)
巻号頁・発行日
no.15, pp.41-59, 2009-06
被引用文献数
2

わが国の農村の中には、修学旅行などを通じた小中学生等の受け入れにより、地域活性化に役立てている地域がある。関連して、国では、小学生の農林漁業宿泊体験を進める「子ども農山漁村交流プロジェクト」事業が進められている。近年の修学旅行では「体験学習」の位置づけが高まっており、中でも関心の高い民泊を伴う「農林漁業体験」は、教育的配慮から「ホンモノ」を求める動きが強い。長野県飯田市と福島県喜多方市における事例分析によれば、受入農家や地域への波及効果として、様々な効果が確認されている。経済効果は、宿泊を含む体験料金収入が最大で年約50万円程度になっているほか、作業効率が向上した例もある。非経済効果としては、子供との共感から生まれる感動や手紙のやりとりから元気を得た農家が多く、地域の連帯感や活気などの副次的効果も確認されている。とはいえ、体験教育旅行は、時期的な集中や家族の協力、コストの見直しなど課題も多い。受入は小規模複合経営が中心であるが、現状では農業生産をしっかり行った上で、労働力の空き時間の範囲での実施を前提に取り組むのが望ましいと考えられる。「ホンモノ」の体験を提供するためにも、受入農家の農業生産を継統的に支える仕組みづくりが同時に必要とされる。本稿は、小中学生を対象とした体験教育旅行が、農業経営あるいは地域コーディネート組織に与える影響側面を実態的に明らかにするとともに、農村地域への経済的・社会的波及効果や今後の展望等について検討することを目的としている。