著者
片山 めぐみ
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.771-777, 2010-03

2005年に北海道の知床半島が世界自然遺産に設録された。今回の登録は、登録地が住民の生活域を含む点においても注目されており、隣接する斜里町(人口約13,000人)と羅臼町(約6,500人)では、自宅の裏庭が自然遺産という状況も珍しくない。なかには個人や町の所有地も含まれる。登録に際しては、登録地周辺も含めた地域住民の日常生活に対する配慮が不可欠とされているだけでなく、当該自然環境での生活知識をもつ住民が自らの生活を通じて自然保護などの啓蒙普及の役割を担うこと、さらにはエコツーリズム等に必要なガイドの育成が推奨されている。登録に際し、住民の意識調査が実施され、観光に対する期待や観光客増加による環境・生活への影響についてアンケート結果が報告されているが、自然とかかわる日常的な活動や場所には注目しておらず、住民の自然に関する知識や経験、大切にしている場所の理解を通してそれらを活かす方法を検討する必要がある。図-1に見るように、斜里町と羅臼町は、東西わずか30km弱の距離にあるが、半島を南北に走る知床連山に隔てられ、知床横断道路が開通する近年まで互いに往来が少なく、世界自然遺産登録に際しての住民の反応や観光地化に対する意識が異なるという声がよく聞かれる。最近では、両地域とも登録域における漁業をはじめ、山歩きや山菜取りなどの自然と関わる生活行動が制限されるのではないかといった懸念の声が共通している。本研究は、世界自然遺産・知床の登録地内およびその周辺地域における、住民の自然とのかかわり方、および居住地に対する誇りの意識を明らかにし、地域資源の再発見という視点から今後の観光のあり方について考察することを目的とする。

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こんな論文どうですか? 知床における住民の自然とのかかわりと居住地に対する誇りの意識の地域差(片山 めぐみ),2010 https://t.co/s5h7vpAKIb

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