著者
永瀬 節治
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.796-803, 2010-03
被引用文献数
2

世俗領域から樹林地を擁する聖域へのアプローチである神社参道は、並木やモニュメントを備える等、他の道とは異なる独自の空間概念で捉えられてきた。さらに近代の国家神道体制のもとで、神社は天皇制と結びついた参拝施設として位置づけられ、特に重要な神社においては、境内の森厳さとともに、参道にもそれに相応しい空間像が求められた。一方、欧米を範とする都市計画の展開の中で、近代都市が備えるべき要素として、ブールヴァールと呼ばれる並木を備えた広幅員街路の概念が導入された。大正期に造営された明治神宮への参宮道路として、市区改正事業により計画された明治神宮表参道(以下、表参道)は、国家的な参拝施設のための大規模な参道であると同時に、ブールヴァールとしての素質を有する街路空間を実現し、今日も東京を代表する並木道となっている。本研究は、このような表参道の空間を成立させるに至った背景や、計画をめぐる一連の経緯を検証し、当初の表参道が備えていた意味と成立空間との関係を明らかにすることを目的とする。

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