著者
永瀬 節治
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.44.3, pp.865-870, 2009-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
15

本研究は、昭和戦前期の紀元2600年祝典記念事業として実施された、橿原神宮を中心とした一連の空間整備事業を対象に、事業の経緯とそれを実現させた地域的文脈について、関連史料を元に明らかにするものである。同事業により、神宮境域の拡張とともに、鉄道線路の移設、都市計画事業による道路整備・土地区画整理等が短期間に実施され、畝傍山・橿原神宮を中心とした、特色ある「神都」が創出された。これらの意欲的な空間整備は、国・県・鉄道事業者の連携と、地元住民の協力により実現を見るが、その背後には、国家神道において重要視された神社を拠り所として都市基盤を実現した畝傍町、「建国の地」をアピールするとともに、国家的祝典に際して更なる観光振興を試みようとした奈良県、また奈良県を中心に巡礼路線網を築いていた大阪電気軌道等、事業に地域主体の側に、事業を受け入れる素地が存在していたと言える。
著者
永瀬 節治
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.796-803, 2010-03
被引用文献数
2

世俗領域から樹林地を擁する聖域へのアプローチである神社参道は、並木やモニュメントを備える等、他の道とは異なる独自の空間概念で捉えられてきた。さらに近代の国家神道体制のもとで、神社は天皇制と結びついた参拝施設として位置づけられ、特に重要な神社においては、境内の森厳さとともに、参道にもそれに相応しい空間像が求められた。一方、欧米を範とする都市計画の展開の中で、近代都市が備えるべき要素として、ブールヴァールと呼ばれる並木を備えた広幅員街路の概念が導入された。大正期に造営された明治神宮への参宮道路として、市区改正事業により計画された明治神宮表参道(以下、表参道)は、国家的な参拝施設のための大規模な参道であると同時に、ブールヴァールとしての素質を有する街路空間を実現し、今日も東京を代表する並木道となっている。本研究は、このような表参道の空間を成立させるに至った背景や、計画をめぐる一連の経緯を検証し、当初の表参道が備えていた意味と成立空間との関係を明らかにすることを目的とする。