- 著者
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中村 克明
- 出版者
- 関東学院大学[文学部]人文学会
- 雑誌
- 関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
- 巻号頁・発行日
- no.119, pp.221-246, 2010
現在、日本には戦前とは異なって、国家の秘密(外交・防衛等)を包括的に保護する国家秘密保護法は存在していない。しかし、防衛秘密に関してはこれを保護するための規定が、2001(平成13)年11月自衛隊法第96条2に新設された。以来、自衛隊・駐留米軍に関する情報は、情報公開法の存在にもかかわらず、国民やマスメディアから遠ざかる一方である。確かに、「罰則」の対象となるのは、「防衛秘密を取り扱うことを業務とする者」に限られているが、しかし兵器の部品等を扱っている民間の下請け業者まで入れるとその数は膨大なものになろう。そして、これらの「防衛秘密を取り扱うことを業務とする者」がそれ以外の「者」に「防衛秘密」を"うっかり<話せば、それだけでその人は1年以下の禁固等に処せられるのである。「防衛秘密」の"聖域化<の下で、言論の自由や知る権利の保障はまさに危機的状況となっている。一体、このような理不尽なことが許されてよいものなのであろうか。極めて疑問である。本図書目録が、国家秘密保護法(制)の研究にとって、多少なりともお役に立つものとなるならば幸いである。