著者
吉田 昭子
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.64, pp.135-175, 2010

原著論文【目的】東京市立日比谷図書館は1908年11月に設立された。本研究では, 東京市立日比谷図書館が果たしてどのような考えを持って設立された図書館なのか, 設立以前の構想と設立経緯を, 経費, コレクション, 設計等から具体的に明らかにすることを目的とする。【方法】当時の雑誌, 新聞, 公文書類等の一次資料や図書館報などによる文献調査を行った。さらに, 今回新たに判明した日比谷図書館建築仕様書を加え, 設立構想の推移を調査した。研究対象期間は1900年から1908年までである。【結果】東京市立日比谷図書館の主な設立構想としては, 伊東平蔵等の小規模図書館構想, 坪谷善四郎の大規模図書館構想, 寺田勇吉の中規模図書館構想の3つがみられる。1906年7月に, 東京市会で通俗図書館建設のための予算が決議された。しかし, 開館時の蔵書総数は12万冊, うち10万冊は日英文庫が占め, 利用可能な図書の6割は洋書であった。図書館を建築したのは三橋四郎であった。東京市立日比谷図書館は収容人数400人, 煉瓦造の耐火構造書庫や児童閲覧室, 婦人閲覧室などを持つ図書館として開館した。今回の調査で, 開館前に雑誌『建築世界』に建築仕様書が連載されていたことがわかった。日比谷図書館は当初の小規模図書館構想より, はるかに大きな規模の図書館として開館した。しかし, そこには市民のための通俗図書館を目指す理念が存在していた。

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