著者
涌井 秀行
出版者
明治学院大学国際学研究会
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.40, pp.1-22, 2011-10

新幹線,超高層ビル,自動車,そして半導体技術をはじめとするハイテク産業。東京都のGDPはオーストラリア一国に匹敵し,2009年までは,日本のGDPは世界第2位の規模であった。誰もが,日本が「高度に発達した資本主義国」であるということを疑わないだろう。だが戦後日本の経済は,前近代的な土地所有を基盤に発展したのである。欧州諸国は資本主義の成立過程(本源的蓄積)で,長い時間をかけて封建的土地所有を近代資本制的土地所有へと編制替えしてきた。農業をともかくも資本主義的農業・産業へとつくりかえたのである。しかし日本ではこの過程を経ることなく,またその暇もなく資本主義国へと転換せざるを得なかった。いや,むしろ戦前の「富国強兵」・急速な近代化の過程では,この半封建的土地所有・寄生地主制が近代化を促進したのである。戦後においても零細農地・農耕=宅地所有が「高度成長」を促進した。戦前も戦後も「前近代の存在がむしろ超近代を加速」(内田義彦)したのである。本稿は,戦後日本資本主義を規定した国内要因=基盤が「零細土地所有=零細農耕」を核とした「土地所有」にあり,その核心は零細農耕=稲作で陶冶された労働力にあることを論証し,この解決をとおして日本の変革を展望しようとする試論である。有効な制限原理,社会的な「公共財」としての性格を持たない,封建領主顔負けの土地所有こそ戦後日本の【基盤】であり,この【基盤】土地問題の解決なしには日本の変革と楊棄はあり得ないだろう。小稿は戦後日本資本主義を規定した国内要因=基盤が「零細土地所有=零細農耕」を核とする「土地所有」であることを論証し,「失われた20年」「閉塞感」打破の国民的立場に立った道筋を見出そうとする問題提起である。論文

言及状況

Twitter (1 users, 1 posts, 1 favorites)

こんな論文どうですか? 戦後日本資本主義の【基盤】としての土地所有 : 歪んで高度に発達した資本主義国・日本の変革における病巣の特定と『土地国有論』再考(涌井 秀行),2011 http://t.co/Z0MfPpQBh3

収集済み URL リスト