- 著者
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中村 剛
- 出版者
- 関西福祉大学社会福祉学部研究会
- 雑誌
- 関西福祉大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:1883566X)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.2, pp.37-44, 2012-03
社会福祉は本来,ケアの1 つであるにもかからず,法制度化された社会福祉の思想においては,ケアの倫理ではなく自立,権利(生存権),正義(公正)といった正義の倫理が語られる.しかし,ケアの倫理は正義の倫理の言葉では語られていない福祉思想を補い,福祉思想の明確化と体系化に寄与することができると考える.このような問題意識のもと本稿の目的は,ケアの倫理は正義の倫理の言葉では語られていない福祉思想の重要な側面を言い表していることを示すことである.考察の結果,ケアの倫理は,①自立イデオロギーからの覚醒,②正義の外部の者への眼差し,③〈選びえない〉現実への眼差しといった,正義の倫理に対する批判的機能を有すること,および,ケアの倫理には正義の倫理にはない「傷つき易い人間存在を気づかい,その人の呼びかけ(ニーズ)に応える」といった内容を有していることを明らかにしている.