著者
中里 厚実
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.205-211, 2016-03-15

我々人類の生活に最も深くかかわってきた酵母の一つにSaccharomyces属が存在する。1838年Meyenによって分離された酵母がS.cerevisiaeと命名されて以来,Saccharomycesに属する多くの酵母が分離されている。一方,S.cerevisiaeには多くの実用酵母が含まれる。すなわち,清酒酵母は葡萄酒酵母やパン酵母と同種と考えられていた。しかし,ビオチンの要求性において清酒酵母と他の実用酵母に差異があることが約半世紀前に初めて認められた。以来,イーストサイジンに対する抵抗性,細胞表面の荷電状態,高濃度アルコール生成など,清酒酵母と他の実用酵母の多くの相違が細胞学的,醸造学的見地から報告された。さらに,1990年代に入り,電気泳動法により生化学的,染色体的見地からの相違が報告された。情報科学の発展と共に2010年代に入り,清酒酵母のゲノム情報も公開されている。

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