出版者
大東文化大学
巻号頁・発行日
2018

本論文は、日本中世文学と密教との関連を考究することにより「密教文学」の特徴を浮かび上がらせ、「真言文化圏」における文学活動を解明することを研究内容とする。「密教文学」とは、密教思想を基盤として創作された文学であり、広義においては真言寺院などの密教的環境において生み出された作品や、文学作品に見られる密教的要素、仏教経典などの聖教に見られる文学的価値などをも含む。また「真言文化圏」とは、高野山や京都・奈良の諸大寺における芸能、唱導、法会など、文学以外の文化活動を視野に入れたものである。こうした「密教文学」という繋がりと、「真言文化圏」という場を組み合わせることにより、密教と文学との有機的な関係の全貌を明らかにする。本論文では特に中世の代表的歌人である西行、新義真言教学の大成者である頼瑜、諸宗兼学をしつつ説話集を著した無住に焦点を当てるとともに、寺院内において文学が生成される場や、僧侶が文学作品を書く素地となる基礎教養などについても考究した。

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