著者
岡田有司 高坂康雅 都筑学
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第56回総会
巻号頁・発行日
2014-10-09

問題と目的 小中非一貫校では小学5~6年生になれば上級生になるが,一貫校ではこうした扱いはなされず人間関係も同様の関係が継続する。こうした環境の違いは子どもの独立心や他者との関係の在り方に差異を生じさせている可能性がある。そこで,本研究では独立性・協調性に注目し小中一貫校と非一貫校の違いについて明らかにする。方 法調査対象者・調査時期 研究(1)と同じ。調査内容 (1)独立性・協調性:相互独立的・相互協調的自己観尺度(高田,1999)を用いた。4下位尺度の内,12項目を使用した(「相互独立性:個の認識・主張(項目1・5)」「相互独立性:独断性(項目3・7・9・11)」「相互協調性:他者への親和・順応(項目2・6・10)」「相互協調性:評価懸念(項目4・8・12)」)。結果と考察 先行研究と同様の4つの因子から捉えられるかを確認したが,同様の因子は得られなかった。そこで,探索的に項目ごとに学校形態(一貫/非一貫)×学年(4年~9年(中3))の2要因分散分析を行い,交互作用が有意であった場合は,単純主効果の検定を行った。以下では,小中一貫校,非一貫校の間で差がみられた箇所を中心に結果を記述する。 独立性に関する項目では,項目1では交互作用が有意であり,4・6年において非一貫校の得点が高かった(Figure1)。項目5でも交互作用が有意傾向であり,4・5・6年で非一貫校の得点が高かった。項目7では学校形態の主効果がみられ,一貫校の得点が高くなっていた。項目11では交互作用が有意傾向だったが,その後の分析では有意差は検出されなかった。協調性に関する項目では,項目2で交互作用が認められ,4・5・6年で非一貫校の得点が高かった(Figure2)。項目6でも交互作用が示され,4・5年で非一貫校の得点が高くなっていた。項目10においても交互作用が有意であり,4年では非一貫校の得点が高くなっていたが,6・7年では一貫校の得点が高くなっていた。項目4では学校形態の主効果が有意で,非一貫校の得点が高いことが示された。項目8では交互作用が示され,4年では一貫校の得点が高くなっていた。 以上の結果から,非一貫校の小学校高学年は一貫校の者に比べ,自分を理解し意見を持つという意味での独立性や,周囲と親和的な関係を築くという意味での協調性が高いことが示唆された。付記:本研究は,科学研究費助成事業(基盤研究(B)課題番号24330858:代表・梅原利夫)の助成を受けたものである。

言及状況

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昨日の朝日新聞の記事で小中一貫校と非一貫校の子どもの比較調査結果が扱われてて、気になったからググってみたらポスター発表の要旨が出てきた。 https://t.co/Ens7Dvxc0Y https://t.co/5GWXLSsB5n https://t.co/WCdTqaA3eU

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