著者
西村 太志
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-05-19

2016年熊本地震では、2016年4月14日21時のM6.5の約1日後の16日1時25分にM7.3の地震が発生した。内陸でさらに大きな地震が続けて起きることは珍しく、希な現象が起きたと考えられる。また、余震数が多く大分の別府地域でも地震活動が活発化したことに加え、2015年11月14日に南東部の鹿児島沖でM7.0の地震が発生していること、一連の地震は中央構造線につながる別府島原地溝帯で起きていること、などから、周辺地域での大地震のさらなる発生が懸念されている。また、阿蘇山や九重山など、火山活動の活発化も懸念されている。本研究では、今回の地震活動の特異性や周辺地域への影響を考えるために、世界で観測されている地震のデータをもとに、大地震の連発性と周辺火山への影響を統計的に評価したので、報告する。 地震データは、現在コロンビア大学が管理するCMT解(いわゆる、ハーバードCMT解)を利用した。1976年から2015年までの40年間の浅発地震(深さ70km以浅)のCMT解のマグニチュードとセントロイドの位置データを用いた。また、火山との関係では、NOAAによるGlobal Significant Earthquake Database、Smithsonian InstituteによるGlobal Volcanism Programの火山データベースを利用した。 M6以上の地震(4176個)を検索した結果、M6.0以上の大地震の発生から2週間以内に、その地震より大きな地震が水平距離100km以内に起きる例は、約3 %であることがわかった。また、M6クラスからM7クラス以上になる地震は0.3%であった。従って、今回の熊本地震のような例は、世界でも珍しい事象といえる。 さらに、大地震がある地域で発生した場合、周辺で同規模あるいはそれ以上の地震がどの程度発生するかを調べた。M7.0以上の地震について、発生時間からの経過時間Tと震央距離D内で起きた地震を連発地震と考える。T=7, 14, 30, 60, 180, 365, 730 days, D=25,50, …, 2000 kmについて、40年間に世界で発生した連発地震の数を調べた。なお、3個以上の地震が連発することも想定し、Dは連発した地震間の距離をもとに微調整した。さらに、連発地震の発生頻度を評価するため、地震の発生位置は固定する一方、時間的にはランダムにしたデータを作成し、連発地震数を調べた(これを通常レベルとする)。その結果、ある大地震が発生した後の数週間は、距離1000km程度までの領域で、連発地震の発生数は通常レベルよりも数倍以上大きくなることがわかった。また、経過時間とともに、発生数が通常レベルに近づき、かつ、領域が小さくなることがわかった。 続いて、大地震による火山活動の活発化を調べるため、大地震の発生からの経過時間と距離による、火山噴火発生数の変化を調べた。データが十分記録されていると考えられるM7.6以上およびVEI(爆発指数)2以上の噴火の1900年から2015年のデータを調べた。その結果、地震からの水平距離から200km程度以内の火山噴火数が増加することが明らかとなった。 以上のように、大地震の発生後の、大地震や火山噴火の発生の確率を経験的に調べることができる。大地震の連発性や火山噴火の誘発例は必ずしも多くはないが、大地震後に起きる活動のシナリオを、火山噴火予測で用いられるような噴火事象系統樹のように、確率を用いて表示することは、地震活動を俯瞰的に理解するために役立てられると考えられる。

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日本地球惑星科学連合2016年大会/グローバルデータに基づく大地震連発性の発生確率-熊本の連続地震発生を受けて- https://t.co/8GCTBxDj43

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