著者
南條 壮汰 佐藤 夏雄 穂積 裕太 細川 敬祐 片岡 龍峰 三好 由純 大山 伸一郎 尾崎 光紀 塩川 和夫 栗田 怜
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

国際宇宙ステーション(International Space Station: ISS)に搭載されたデジタル一眼レフカメラ(デジカメ)を用いて、オーロラの連続カラー画像が撮影されており、NASA のウェブサイトで公開されている。我々は、それらの画像の中でも、オーロラの高さ構造を同定できる地球をリム方向に撮影した画像を解析的研究に活用することを提案してきた [Nanjo et al., 2020, submitted]。ISS は約 90 分の周期で地球を周回しているため、MLT 方向に 4-5 時間程度のオーロラの大規模な構造をスナップショットとして観測することができる。大規模構造の一例として、オーロラオーバルの朝側領域において、輝度の高い領域が波を打ったような構造になるオメガバンドが広く知られている。これまでに、オーロラを真下/真上から撮影する様々な地上/衛星観測によりオメガ構造の西側(夜側)は東側(朝側)に対して輝度が高くなることが指摘されている [e.g. Opgenoorth et al., 1994; Amm et al., 2005]。しかし、これらの観測はオーロラを二次元的に捉えるため、高さ構造については明らかにされてこなかった。ISS のリム方向デジカメ観測では、オーロラを斜めに捉えているため、高さ構造を識別できる。その結果、いくつかの事例でオメガ構造の明るい領域の西端と暗い領域の境界線上に、南北方向に 300-600 km 伸びる高さ 200-300 km 程度の壁状のディスクリートオーロラ( “Great Wall” )が存在することがわかった。図に示す通り、Great Wall は、底部が緑色で、上部が赤色に発光する。また、Great Wall は南北半球で共通する現象であることもわかった。磁力線方向に伸びる赤と緑の発光は、広いエネルギー帯の電子が加速されていることを意味するが、これは Amm et al. (2005) の UV 観測で見積もられた降り込みエネルギーの 2-5 keV という狭い範囲の数値とは一致しないものである。これは、彼らが用いた観測機器の時空間分解能が低く、Great Wall の部分を切り分けることが難しかったためであると考えられる。また、オメガ構造の内部では、活発な脈動オーロラが観測されることが多いが、THEMIS 衛星との同時観測により、これらがコーラス波動との波動粒子相互作用により降り込む典型的な脈動オーロラであることがわかった。大会では、オメガ構造に現れる Great Wall を作る電子のエネルギー帯やそれらから示唆される磁気圏-電離圏結合系の電流系ついて議論を行う予定である。

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