- 著者
-
細川 敬祐
- 出版者
- 電気通信大学
- 雑誌
- 新学術領域研究(研究領域提案型)
- 巻号頁・発行日
- 2018-04-01
アンテナ,フィルター,プリアンプ,ソフトウェア受信機からなる観測システムを 1 式製作し,沖縄県恩納村に設置した.受信信号を比較的安価なソフトウェア受信機で処理し,周波数チャネルごとに信号を分割して受信・記録することで,Es の出現を検出することが可能になっている.昨年度までに設置が完了していた 5 箇所と合わせて計 6 地点で得られたデータを電気通信大学に準リアルタイム(1 時間遅れ)で転送し,ウェブ上に表示するシステムを構築した(http://gwave.cei.uec.ac.jp/cgi-bin/vor/vhf.cgi).これにより,スポラディック E に伴う異常伝搬をリアルタイムに可視化することが可能になっている.複数の送信局に同一の周波数が割り当てられることがあるため,中間反射点における Es 発生の有無を地図上にマップするためには,各チャネルの受信信号に対応する送信局を特定する必要がある.我々は,各チャネルに対応する送信局のリストを作成し,アンテナの指向性や各送信局の運用形態,送信パワーなどの情報を用いることによって,受信信号から送信局を自動的に識別する手法を確立した.この手法を用いて,国内 6 地点(調布,呉,菅平,大洗,サロベツ,沖縄)の観測から異常伝搬事例を抽出し,送信元の局を特定することによって Es 発生領域を地図上にマッピングすることに成功している.この成果を地球電磁気・地球惑星圏において公表し,現在論文にまとめているところである.上記以外にも 3 件の論文を査読付き学術雑誌に投稿し,1 件が公表済,2 件が現在査読中となっている.今後は,複数地点のデータを組み合わせて Es 空間分布の時間発展を準リアルタイムで可視化するシステムを構築し,航空局やエアライン,ICAO など,想定されるユーザへのリアルタイムの情報提供に繋げていく.