著者
顔 聖紘 穆 家宏 〓 家龍 吉本 浩
出版者
THE LEPIDOPTEROLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.175-184, 1995-12-10 (Released:2017-08-10)
参考文献数
21

台湾には2種のアゲハモドキ(Epicopeia mencia Moore,オナガアゲハモドキとE.hainesii matsumurai Okano,アゲハモドキ)が分布する.それらは日本や中国で生活史が分かっているものの,台湾では充分に調べられていなかった.私達は1992年から1993年にかけて,これら両種の台湾での生活史を調べることができたので,ここに報告した.Epicopeia mencia Mooreオナガアゲハモドキ食樹はニレ科のアキニレ.これは中国および日本(対馬)で知られる食樹と同じである.卵は食樹の葉の裏面にまとめて産み付けられ,幼虫は終齢(6齢)まで白色の蝋状物質をまとう.蛹化は白い蝋物質で覆われた柔らかい繭内で行なわれる.成虫は4月から10月まで見られ,年2-3化.台湾全土の標高500-2,000mまでの常緑カシ帯に分布するが,食樹の分布に限定されて局所的である.Epicopeia hainesii matsumurai Okanoアゲハモドキ私達の確認した食樹はミズキ科のミズキ,クマノミズキ,ヤマボウシで,日本での記録と同じである.卵は,前種同様,食樹の葉裏にまとめて産み付けられ,前種よりやや小さい.幼虫は終齢(6齢)まで白色の蝋状物質をまとうが,3齢以降の蝋物質の分泌は前種よりも多く,いくつかの体節では細い毛束状,蛹は前種よりもスマートである.成虫は4月から10月まで見られ,年2化.台湾の北部,中部,東部の標高500-2,000mまでのいくつかの産地に限って分布する.