著者
林 良嗣 加藤 博和 〓巻 峰夫 加河 茂美 村野 昭人 田畑 智博
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

社会基盤整備プロジェクトのLCAにはSocial/Dynamic LCA概念の具体化が必要であることを示し、各社会システムに対してLCAを実施したところ、以下に示す成果を得た。1.交通・流通システム:1)道路改良事業の事業計画段階において、環境負荷削減効果を自動車走行への波及効果を含めて定量的・包括的に評価するための方法論を構築し、自動車走行状況に応じた削減効果の発現条件を明らかにした。2)航空路線を削減し新幹線輸送に転換させることの有効性について、LCAを導入して検証を行う方法を提案し、新幹線整備をCO_2排出量の観点から評価した。3)容器入り清涼飲料水の流通段階の環境負荷排出の内訳をLCAにより詳細に分析し、流通・販売形態によってLC-CO_2が大きく異なることを明らかにした。2. 廃棄物処理・上下水道システム:1)ごみ処理事業を対象とし、中長期視点から処理施設の維持・更新とごみ処理に係るLCC、LC-CO_2を算出することで、将来からみた現在のごみ処理施策の実施効果を評価するモデルを開発した。地方都市でのケーススタディでは、現在のごみ処理施策実施に伴うLCC、LC-CO_2を積算し、これらを削減するための処理政策を提案・評価した。2)生活排水処理システムについて、計画段階でLCAを適用のするために必要な原単位を整理・分析し、実際の計画へ適用したところ、排水処理技術の進展についても考慮が必要なことが明らかになった。3. 都市システム:1)地域施策や活動にLCAを適用する際の課題を整理し、地域性の表現、地域間相互依存の考慮といったLCAの手法面で検討が必要な項目を明らかにした。2)郊外型商業開発のLCAを用いた分析の枠組みを整理し、時系列的な変化を考慮することの必要性や統計データの精度に改善の余地があることを示した。なお、日本LCA学会誌Vol.5 No.1(2009年1月発行)において、研究分担者・加藤博和が幹事を務めた特集:「社会システムのLCA:Social/Dynamic LCAの確立を目指して」は、本研究の成果公表の一環として位置づけられている。