著者
アラウジョ アドリアナ ベレン デ 萩原 篤志
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大學水産學部研究報告 (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
vol.82, pp.85-92, 2001-03
被引用文献数
1

大量培養中のワムシのストレスを検出できれば,培養不良の事前の回避に役立つ。ここでは,酵素活性測定によるワムシ培養診断を試みた。ワムシの培養には1kl水槽を用い,培養水温を28℃とした。本研究では,まず,バッチ式で大量培養中のワムシを直接材料として酵素活性を測定したが,ワムシ個体群の増殖経過との間に明瞭な関係は認められなかった。これは個体群内のワムシの齢やサイズの組成が一定でないことに基づくものと推測された。そこで,耐久卵から孵化したばかりのワムシをあらかじめ用意し,これらをワムシ培養漕から採取した培養濾液に曝露して,耐久卵孵化ワムシが示す酵素活性を求めた。その結果,グルコシダーゼ活性(使用した基質はFDGlu)は,大量培養ワムシの個体群サイズと相関しながら変化することが分かったが,培養水温が高かったせいもあり(28℃),一日一回の測定によって,大量培養ワムシ増殖率の低下を事前に検知することはできなかった。一方,環境中のストレス因子の増大にともなってエステラーゼ活性(基質,cFDAam)が上昇し,大量培養ワムシの増殖率が低下するとエステラーゼ活性も下降した。耐久卵孵化ワムシを用いたエステラーゼ活性の測定はワムシ培養不良を事前に検出する一手段になると考えられた。