著者
紙谷 喜則 イッサ.ザカリア アブドゥルスディ 比恵島 裕美 守田 和夫 八木 史郎
出版者
The Society of Agricultural Structures, Japan
雑誌
農業施設 (ISSN:03888517)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.141-146, 2008-09-25 (Released:2011-09-05)
参考文献数
10

強酸性電解水は, 次亜塩素酸塩を含むため, 強い殺菌効果があることが知られている。その殺菌効果により, 手指消毒液生成装置として医療機器に承認され, また, 食品添加物として日本の厚生労働省によって認可された。現在, 強い農薬を使用している農業分野では, 代替農薬として使用されることが期待されている。農業の分野では, 主に, 地下水を使用して電解水を生成される。地下水には様々なイオン種が存在するために, 強酸性電解水を生成する上でpHバッファー効果を有する。従って, 被電解水の水質が強酸性電解水の殺菌効果へ及ぼす影響を検討した。試験に使用される被電解水は, 日本の地下水の水質調査結果からアルカリ度に注目し, NaHCO3を希釈調整して用いた。本報告書では, 炭酸イオンの濃度と強酸性電解水のpHの相関を確認した。電気分解に用いられる原水のアルカリ度 (炭酸イオンに濃度) が0mg/L (純水) の時に, 食品添加物に規制された中心値 (pH2.5) になる電解電流値は8Aであった。この電解電流値で生成すると, 炭酸イオン濃度が68mg/Lの時, 食品添加物に規制された上限 (pH2.7) となることが確認された。また, 日本で使用される地下水の最大アルカリ度は150mg/L以下であり, その時のpHは3.3まで上昇した。pH3.3とpH2.7 (規格値上限) にて同じ有効塩素濃度に調整し, 大腸菌を用いて殺菌速度を比較したところ, pH3.3の方が早い傾向が見られた。強酸性電解水の生成に炭酸イオンを含んだ, 地下水を使用しpH承認範囲 (pH2.5±0.2) から外れ, pHが3.3になったとしても, 大腸菌を用いて確認した結果, 殺菌速度に大きな影響は無かった。